女子作家三人旅「ねえさんずの怪」魔界温泉ツアーNO2

さて、到着しました。ここが「海花亭、花御前」です。
なんと、全館(廊下も、エレベーターの床も)畳敷き。
部屋へ行く廊下も、明るくて、畳の感触が心地いいのです。
←ロビー
←宿泊した西の露天風呂付離れの「あざみ」の部屋です。
とても広々したお部屋でした。花瓶には、白百合の花が……。
写真班の日輪ねえさんの写真が届いたので、パンフレット写真と差し替えました。

←これは、昼間の部屋付きの露天風呂。
さて、夕食の前に、いざ露天風呂へ〜
といっても、ここ海花亭には、なんと三つの大浴場(すべて掛け流しの温泉)があって、そのうち一つは夕日が浦を見下ろせる紫峰閣の最上階にあり、残る二つはそれぞれ露天風呂。
「どこから行く〜?」とヒロ子ねえさん。
「まず、夕日が浦の夕陽を見ねばならん」と、日輪ねえさん。
「ならば、外堀から制覇するか!」と、意気揚々のねえさんがた。

←紫峰閣
(え、まさか、全部の風呂に入るつもり!? せっかく、部屋付き掛け流し露天風呂があるのに?)と、ひそかに思った私。
しかしながら、ねえさんがたの勢いに水を差してはならじと、私もお伴することに。
この時、役に立ったのが犬型エコバック。
ここへ、旅館のバスタオル、裸身カバー用の乙女バスタオルなどをつめこみ、一路、紫峰閣の最上階温泉へ。
夕日が落ちる瞬間を見なければ、夕日が浦温泉に来た甲斐がないではないかというわけ。

しかしまあ、他のお客さんもご一緒の温泉となると、乙女タオルは持ちこめないので、小さな手ぬぐいだけで裸身をカバー。熱めの鉱泉の気持ちのよいこと。
とはいえ、夕焼けはまだ始らず、じわじわのぼせてきた頃、ついに夕日が沈み始めました。
「よっしゃ〜」と、いざ、ガラス張りの窓から夕陽を…… く、く、曇っている。
それも、かなり厚い雲が夕陽を遮っていて、雲のわずかな隙間から赤い縁取りが見えるだけ。
「……ゆ、夕陽が」「雲でまったく見えん」「しかもこの窓は北向きではないか」「むしろ、もう一つの露天風呂の方が正面だったのでは?」いい合ったが、どっちにしても厚い雲は変わらず。
「うう、もう無理!」すっかりゆだってしまい、ふらふら、紫峰閣の温泉を出れば、外は、灰色の空から雨が降り始めていました。
「しかし、ここまで来たからには、日本海を見るべし!」と、懲りずに浜辺へ。
日本海
海は白波が立って、まさに冬の日本海。しかも、雨だけでなく風も出始めて、温泉で温まった身体はすぐ冷たくなりはじめました。
「うーむ。今日から雨が降るとは、汁物の降り方が足りんかったか…」とつぶやくヒロ子ねえさん。


せっかくの浜辺でしたが、ここでも、夕陽も夕焼けも見えず。
バサッバサッと、浴衣の裾が鳴るような雨風に、ヒロ子ねえさんはバスタオルをマチコ巻きに(死語?)。
私は、乙女タオルを襟巻にしました。
←えりまき
「寒っ」と、帰ろうとして、ふと空を仰ぐと、いつの間にか、天上は真っ黒な雲に覆われていました。
まるで、魔界の大王が巨大化したよう……。
「いざ、露天へ急げっ」と、二つ目の温泉へ。

のぼせた身体は、すっかり冷えていたのです。
さて、こうして、外堀を制覇して、宿へ帰りました。



待っているのは、楽しいおしゃべりの時間と、豪華なお料理です。
「天国じゃ、天国じゃ〜」
明日という日を知らぬ人の呑気さで、この夜、飲んだり食べたりしゃべったりの内容をぜひ皆さまにも聞かせてあげたいのですが、そのほとんどが業界シークレットなので、書けなくて残念!
この夜、めでたい出来事は、ついに、日輪ねえさんが盛大にお水をひっくり返したこと。
「やった〜」
「これで、明日は晴れる!」
ヒロ子ねえさんと私は勝手にそう決めつけて、深夜に就寝しました。






朝です。
障子を開ければ、しとしと雨。
「ああ、やっぱり、こぼし方が足りんかったか」この期におよんでも、まだいうヒロ子ねえさん。
「朝だ!朝風呂だ!」と、雨などものともしない日輪ねえさん。
どうやら、お二人は、制覇できていない露天風呂、つまり内堀を埋めに行くらしい様子。
←ねえさんがたの朝露天風呂。
そこで、私は思いを残さないためにも、一人残って部屋付き露天風呂に入ることにしました。



ねえさんがたがいなくなった静かな部屋で、一人占めの露天風呂の気持ち良かったこと。
雨が降る音も、なんだか雅です。
あ、いや、ねえさんがたがいるとうるさいとか、雅でないとか、そういう意味ではありません!
ありませんよぉ〜 ねえさんがた〜♪
しばらくして、帰ってきたねえさんがたは、もっちろんのこと、部屋付き露天風呂も制覇しました。(凄い根性です)
聞くところによると、旅館の仲居のおねえさんまで、「ええっ、全部お入りになったんですか〜」とあきれ顔だったらしい。
さて、美味しい朝ごはんを頂いた頃には、外は土砂降り状態。
しかも、日輪ねえさんは傘を持ってなかったのですが、宿の送迎バスが最寄りの駅まで送ってくれました。
そして、駅での待ち時間。
ヒロ子ねえさんが、なんとなく観光地図などを見て「『ゑ●すや』(今後の展開が憂慮されるので伏字)って旅館に……松本清張先生が執筆された書斎があるんだって……」と。
「え、どこ? ここから遠いの?」と、私。
「近い近い。歩いて10分ぐらい」
「わ、行ってみたい! うちら、作家やし、清張先生のご利益があるかも〜」
「でも、私、傘がない……」と日輪ねえさん。
「大丈夫。私の傘が大きいから」すっかり乗り気の私。
同じく乗り気のヒロ子ねえさんと、いまいち気が乗らない日輪ねえさんを引っ張って、雨の中、ゑ●すやへ。しかし、その10分ほどの間に、雨は本物の土砂降りに〜
それでも、ヒロ子ねえさんと私は、大正ロマン風の旅館を期待して、心は浮き立ちます。
「こういうの、案外運命かも〜 柏手打たなきゃ、ポンポン」と、すっかり神社と混同していた私。
しかし、土砂降りに相合傘では、私の右肩と日輪ねえさんの左肩はぐっしょり濡れ始め、いったん途中で雨宿り。
「おお、この乙女タオルが役に立った〜」と、日輪ねえさん。露天風呂ではマフラーとしてしか役に立たなかった乙女タオルが、ついに日輪ねえさんの水難をカバーしたのでした。
「じゃ、今度は左右反対の相合傘で」と私。「左右反対?それはもしかして、たんに両肩が濡れるということでは?」日輪ねえさんのつっこみもなんのその。
「あったよ〜」と手を振るヒロ子ねえさん目指してひた走る。
「え、ここ?」
目前のすすけたコンクリートの建物を前にして、ヒロ子ねえさんが「そうらしい」と頷きます。
しかし、そこは、ロビーの明かりは消え、ぼわんとうす暗く、ほんとに営業しているの?といいたくなるような建物でした。
まあ、ともかく、せっかく土砂降りの中、はるばるここまで来たのだから、訪ねるだけは訪ねてみようと、ヒロ子ねえさんが玄関へ。と、掃除婦さんのような制服を着た中年女性が、ヒロ子ねえさんに立ち塞がったのです。
「何の用だ」とでもいうように。
その時、ヒロ子ねえさんは気づいていませんでした。
ついにこの時、知らず知らず、魔界の扉を開けてしまったことに……

明日につづく