『昭和の怪談実話 ヴィンテージコレクション』東雅夫編

昭和の怪談実話 ヴィンテージ・コレクション (幽クラシックス)
昭和初頭から戦後初期のカストリ出版時代までに刊行された幻の怪談実話本の中から、選りすぐりの物語を収録。取材にもとづきながらも、書き手の創意工夫を加味して生みだされる、虚実なかばの妖しい世界は、当時のエロ・グロ・ナンセンス趣味とも相まって、大いに流行し、出版界において「怪談」が流行語にすらなるほどの盛り上がりを見せた時代の傑作集。国会図書館にも収蔵されていない、いずれも怪談マニア垂涎の稀覯書ばかりのレアなコレクションを一挙公開。古き良き怪談実話の妙趣を愉しむとともに、現在の怪談実話のルーツと、その変遷をも知ることができる一巻。 (amazon内容紹介より)

『昭和の怪談実話ヴィンテージ・コレクション』東雅夫編(メディアファクトリー)は、懐かしくも恐ろしい鬼気怪々の(いや、奇奇怪怪。でも鬼気の字が使いたくなる)一冊。


時代の香り漂う挿画も、見世物小屋のごとき妖しく懐かしい復刻画の面白さに満ちています。
何より、図書館でもそうそうお目にかかれない掘り出し物の怪談を現代仮名遣いで読める幸せ!
ありがとう東先生〜 と、どうしたって、 をつけたくなります。
これを読んで、不思議だったことは、貧しかったはずのあの時代が温かくさえ感じることでした。(怪談なのに!)それはきっと、あの時代の人々の体温が伝わってくるからかもしれません。
帯にあるエログロナンセンスというのは、確かに、そうなんだけれど、でも、それはグロテスクじゃないのです。むしろ、昭和のあの頃の、人々の内面の豊かさが感じられました。そう、当時の人々の想像力の豊かさ、拡がり、風のような自由奔放さが羨ましい。
多くの現代人は気づいていないけれど、想像力は人間力なんです。
美しい気持ちのいい何かも、恐ろしく目を背けたくなる何かも、目に見えない不思議な何かも、想像する力があってこそ、人間は人間たりえると、私は思っています。そう、大人より子供の方がずっと人間としては完成しています、その点では。
私が東雅夫さんのご本の大ファンなのは、うっかり子供時代に置き忘れてきた宝物を思い出させてもらえるから。
同じ意味で、京極夏彦さん、夢枕獏さんのご本も、読んだ後、心からありがとう〜をいいたくなります。
さあ、妖しく美しい世界へ、どうぞお出かけ下さい〜(written by 越水利江子