『語りつぎお話絵本3月11日 1』作/堀米薫・ささきあり 絵/スガワラケイコ・タカタカヲリ(学研)

語りつぎお話絵本3月11日(全8巻)

語りつぎお話絵本3月11日(全8巻)

2011年3月11日に発生した東日本大震災を題材とする、聞き取りをもとにしたノンフィクション絵本。体験者の実話と、地震に関する資料ページで構成している。被災体験を読者に伝え、その心情と教訓をわかりやすく伝える。 (amazon内容説明より)
貴重な語りつぎ絵本の中の一冊目には、堀米薫さんの「りょうくんと子牛の光」と、ささきありさんの「どろ水がふきだした」の二つの物語が入っている。どちらも、あの3.11大震災を体験した人しか書けない物語で、あの震災を語りつぐために貴重な物語です。
「りょうくんと子牛の光」は、友人作家である堀米さんの作品。子どもと子牛の触れ合いが胸に迫りました。農業と畜産をしておられる堀米さんの暮らしには、彼女のブログ日記で度々触れているし、同人仲間でもあることから、直にお話しする機会も多いのです。私自身、子牛の光が生まれた時も知っています。命が生まれる瞬間のあの喜びと輝き。すくすく育っていく命の愛しさ……その一つ一つの愛を、あの震災、あの原発事故はどれほど奪っていったのでしょうか。
天災はどうしようもないかもしれない。けれど、人災である原発事故のせいで人々は故郷を奪われ、牛も豚も鶏も野生の生き物も、どれほど死んでいったでしょう。
そう思えば、すんだことは仕方がないと忘れてしまうことは、決して、してはならないことだと思います。語り継ごう。そして、もう二度とこんなことが起こらない暮らしを選び取ろうと、強く思わせられた絵本でした。