『くものちゅいえこ』作/森川成美・絵/佐竹美保(PHP出版社)

くものちゅいえこ (PHPとっておきのどうわ)

くものちゅいえこ (PHPとっておきのどうわ)


ちゅいえこは、小さなくもの女の子。古道具屋にすんでいます。ちゅいえこの最初のすみかは、扇風機の中です。ところが、扇風機は、お客さんに買われて行ってしまいました。ちゅいえこの次のすみかは、置き時計の中です。ある日、ちゅいえこは、時計の奥の深い溝の中に、茶色い細長い袋があるのに気がつきました。それが何なのか、時計に聞いても、さっぱり関心がないと言わんばかりでした。しかし、ちゅいえこは、毎日、毎日、そこを通る度に、この袋のことが気になってしかたありませんでした。そこで、ちゅいえこは、お店のおじいさんにその袋のことを知らせるため、店中に糸をはりめぐらせようとしますが、そのためには、恐ろしい大ぐものそばを通らなくてはなりません。果たして、ちゅいえこは、糸をかけて、おじいさんに気づいてもらうことができるのでしょうか。ハラハラドキドキの心温まる幼年童話。 (amazon内容説明より)

くものちゅいえこの住処が古道具屋だというのが、とても魅力的でした。しかも、登場する扇風機や古時計に命が宿っていて、私は、どっちも大好きになりました。
物語も可愛いちゅいえこがどうなるのか、子どもたちはハラハラどきどきして読むにちがいありません。
そしてまた、佐竹美保さんの絵が素晴らしく可愛い! なのに、ちゅいえこにとっては怖い大きなクモの恐ろしさったら! 子どもたちも震えるでしょう。……でも、ページをめくって、古道具屋の主人から見た大きなクモは、まったく印象が違うところまで描かれていて、なんとも微笑ましいのです。
文と絵がこんなにぴったり合った本は、なかなか見つかりません。
森川さんにとってはデビュー作と書かれていましたが、デビュー作がこんなに完成度が高くては、読者には楽しみですが、作家にとっては大変かもしれませんね、いい意味で。