安田夏菜さんの新刊二冊『あの日とおなじ空』の『あしたも、さんかく 毎日が落語日和』

あの日とおなじ空 (文研ブックランド)

あの日とおなじ空 (文研ブックランド)

ひさしぶりに会った沖縄のひいばあちゃんは、顔をくしゃくしゃにして笑って、ダイキをむかえてくれました。でも、ダイキに戦争のことを聞かれた日、その笑顔は急に消えてしまったのです。戦争のころ、ひいばあちゃんに、なにが起きたのでしょうか。その答えを教えてくれたのは、声の出ないキジムナーでした…。小学中級から。(BOOKデータより)

この物語は、以前、原稿段階で読ませて頂いた物語です。あの時読んだ、沖縄を舞台にした不思議なファンタジーを、夏菜さんは、こんなに切ない……けれど、心温まるお話にして下さったのだなと思って、感動しました。
ことに、物語の最後に、ひいおばあちゃんが主人公のダイキにいう「おまえたちは、空に、美しいものを見せてやっておくれ」という言葉が胸に沁みました。
今、日本は、戦争をしない平和な国ではなくなろうとしています。
現代の私達は、日本の空に、これからも美しいものを見せられるのでしょうか……そんな問いも、胸に浮かばずにはいられません。

若おかみは小学生!』の令丈ヒロ子氏が絶賛。「ダメダメな人にも、そうでない人にも、はてしなくあたたかいお話です。出てくる人みんなの体温があつい! 笑えます!」 小学5年生の3学期、クラスのイベントごとをいちいち仕切りたがる圭介に、幼なじみの春香が「低学年みたいに、やれ応援や、それ特訓やってがんばれるかいな。おせっかいはもう、やめとって」とツッコんだのをきっかけに、圭介は「空気の読めない奴」として、クラスで浮いた存在になってしまった。そんな圭介の前に、5年前に失踪したはずのじいちゃんが、突然、姿を現した。じいちゃんは、家族のことを顧みずに50歳で仕事を辞めて落語家に弟子入りし、酒でしくじり破門され、あきらめきれずに独演会を開いたはいいが、その費用を孫の圭介の貯金から失敬したという過去の持ち主。じいちゃんは、アマチュア落語コンクールで優勝して、賞金でお金を返すと大見得を切る。疑いの眼を向ける圭介を、じいちゃんは公園に連れていくと、古新聞を座布団代わりに、さくらんぼの木が頭から生えた男の落語をはなしはじめた。何とも奇妙なストーリーを表情豊かに語るじいちゃんの世界に、圭介はどんどん引き込まれて……(BOOKデータより)
ユーモア作品がお得意な令丈ヒロ子ねえさんが、こんなに褒めるのだから、きっと面白いだろうと思って読みましたが、期待通りでした。
はちゃめちゃじいちゃんと圭介のボケと突っ込みに、何度も吹き出しました。
でも、この物語は面白いだけではなく、人生のふか〜い思索も読み取れるのです。
作者は、上方落語台本募集でも入選したセンスの持ち主。
この物語にも、最後に、渋い一言が出てくるのですが、それはネタバレになるので書かずにおきます。ぜひ読んでみて楽しんで下さい。