『モーモー村のおくりもの』著/堀米 薫 絵/岡本 順

モーモー村に、ようこそ!この村の、ほんとうの名前は「百々谷村」。でも、人より牛の方が数が多いので、「モーモー村」と呼ばれているのです。ある春の日、モーモー村に、ママをなくした美咲がやってきました。自信をうしない、さびしさをかかえた美咲の心を、モーモー村のやさしい風がつつみこみます。小学中級から。(BOOKデータより)
季節風同人の作家、堀米薫さんの新刊です。
堀米さんは作家でもあり、一方で、山々に囲まれた豊かな土地で、牛を飼い、農業もなさっています。この物語は、その豊かな自然との触れ合いが随所に織り込まれた作品です。
牛の出産、母牛と子牛の愛、ホタル舞う棚田、稲の花の匂い、巣立っていく子牛…など、都会暮らしの子どもたちには体験できない物語が描かれています。登場する人物像も、子どもから年寄りまで、どの人も豊かでたくましく、その色彩も香りも、目に見えて、ふくいくと香ってきそうです。
体験した人にしか書けない濃く豊かな物語なので、自然との触れ合いの少ない都会の子どもたちに、素晴らしい贈り物になると思います。
また、この物語には、沢山のお婆さんが登場しますが、その人たちがみな素晴らしい能力を持っていらして、周囲から尊敬されていらっしゃるのを見て、その土地の人々を羨ましく感じました。私の育ったのは京の下町ですが、やっぱりおばあさんが一杯いらしたけれど、こんなに生き生きとなさっていたり、周囲から尊敬されたりというような幸せなお婆さんはそれほど多くなかったような気がします。都会の年寄りにもこんな幸せを〜と、心から願わずにはいられませんでした。