『金色のキャベツ』著/堀米 薫 絵/佐藤真紀子

金色のキャベツ (ホップステップキッズ!)

金色のキャベツ (ホップステップキッズ!)

あたし、わすれない!このキャベツ畑を、ぜったいにわすれないから!夏休み、あたしは両親にないしょで、大好きな仁ちゃんのはたらくキャベツ畑へ行った。そして、テストもピアノの発表会もない高原の畑で、「キャベツで生きてる」人たちに出会った― (BOOKデータより)
人生をいかに豊かなものにするか、感じるか……ということを教えてもらったような気がします。都会でギスギスと暮らす主人公の少女、風香だけでなく、読者の渇いた心も瑞々しく満たし、豊かにしてくれるような作品でした。
堀米薫さんは、全国同人誌連絡会「季節風」の同人でもあり、毎年秋に開催される「季節風大会」でも、レギュラーの作家さんでもあります。
季節風大会は、プロアマにかかわらず生原稿を引っ提げて集まり、二日かけて合評会をする熱い作家の研修の場で、この作品は、この季節風大会の「愛の物語分科会」へも提出されたことのある物語です。その作品が見事に結実して、この一冊の本になりました。
物語を読んでいると、見事な玉のようになったキャベツの畑の壮大な風景が目に浮かびます。キャベツ作りにかかわる人々のキラキラ輝く瞳も、汗も見えます。それだけでなく、キャベツサクッとを切った瞬間の音や香り立つ甘い匂い、その味まで、想像するだけで強く印象に残るのです。このレシピのコールスローを食べてみたいと、読者は皆思う事でしょう。
この物語は、少女、風香の喜びを読者も共に体験できる稀有な一冊でした。
風香が心惹かれる拓也も魅力的で、人が生きることの厳しさと喜びを、その背中で体現しているような少年で、生きることは甘くない、けれど、喜びに溢れていると感じさせてくれました。
ありがとう、仁ちゃん、風香、拓也って、お礼をいいたくなる物語です。
ぜひ、読んでみて下さい。