『宵越し猫語り』著/小松エメル/近藤史恵/佐々木禎子/宮本紀子/森川成美

今、読みたい本読まねばならない本が積み上がっているのだけれど、季節風でご縁のあった小松エメルさん、森川成美さんも参加のアンソロジーという事で、バッグに入れて持ち歩いていたら読めました!

宵越し猫語り 書き下ろし時代小説集 (招き猫文庫)

宵越し猫語り 書き下ろし時代小説集 (招き猫文庫)

近藤史恵、小松エメル、宮本紀子、 森川成美、 佐々木禎子、注目の女性作家5人が織り成す、江戸を舞台にした、涙あり、笑いあり、不思議ありの猫アンソロジー。 2015年11月刊。(BOOKデータより)
猫、猫、猫…のアンソロジーの目次は以下の通り↓
「風来屋の猫」小松エメル
「猫の目時計」佐々木禎子
「両国橋物語」宮本紀子
「こねきねま『宿屋の富』余話 森川成美
旅猫」 近藤史恵
各方面で活躍なさっている女性作家ばかり。さすがというか、どの話も面白かった。
アンソロジーとしても、機知に富んでいた。
ここでは、そのうちの三話をご紹介したい。
小松エメルさんの「風来屋の猫」
優しく温かい夫を亡くし、男勝りの磐(いわ)は、口入屋の女主人として肩ひじ張って生きている。そこへ、ふらりと現れた白猫には、なぜか、亡き夫の魂が宿っていた…と書けば、まあ、よくありそうな人情もの?と思われるかもしれないが、そこはさすがに妖怪シリーズの手練れの小松エメルさん。ただでは終わらない。
白猫が現れた瞬間、その猫のセリフにぐいっと掴まれて、一気に読まされてしまい、あげく、ほろりとする。
 
森川成美さんの「こねきねま『宿屋の富』余話」 
貧乏旅籠に住み着いた貧乏神の猫とでもいおうか、「こねきねま」のお話。貧乏旅籠に泊まった謎めいた侍は、仇持ち。つまり仇討の旅に出たものの、その仇が打てない故に、死を覚悟した男。そんな男と貧乏旅籠の一人娘とのやりとりが切ないのに、なにやら可笑しい。この呼吸が好きだった。こねきねまと呼ばれた猫は貧乏神か、福神か…結末の爽やかさに、またこの人の作品を読みたいという読者が増えるかもしれない。

近藤史恵さんの旅猫
これも読まされた!
大店の、しかも桐箱入りのお嬢さま、お縫(ぬい)は子どもの頃に誘拐されかけたことがあってから、茶室から一歩も出られないような日々を送っていた。そこへ、話し相手としてやって来たお時(とき)はきりりとした瞳の美しい娘。旅に出たい、お伊勢さまに行ってみたいと憧れているお縫に、お時はお伊勢参りへ行った猫の話をする。猫は本当にお伊勢参りに行ったのか行かなかったのか、賭けをしたお時とお縫。
さてその結末は、女性読者をきゅんとさせること請け合いだ。