『ビジュアルブック語り伝える空襲 逃げまどう市民たち』監修/安斎育郎

今こそ語りたい戦争児童文学を書くため、多くの資料を集めている。
その中の、この一冊↓が素晴らしい。全5巻の内の4巻。

見返しには、かの太平洋戦争においてアメリカが行った日本全土への無差別大空襲の年表があり、その地域死者などを網羅した表や地図もある。
4巻は大阪大空襲と四国の空襲編。
私が書こうとする二人の母がいた地、大阪、京都、高知の空襲についての記事もあり、当時の写真も満載されていて、まさに無差別空襲の恐怖が伝わってくる。
比較的空襲が少なかった京都は、アメリカが文化財を守る為に、空爆や原爆投下を控えたというのは真っ赤な嘘だと、この本を見てもわかる。
京都に空襲が少なかったのは、まさに原爆投下の第一候補地だったからにすぎない。
原爆投下後の最大限の成果(被害)を見るために、わざと大空襲を控えただけであり、文化財保護や温情などではなかった。
ただ、日本人の魂の故郷ともいえる京都を壊滅させては、日本人の心がアメリカから離反してしまい、アメリカによる戦後支配がうまくいかないかもしれないという理由のみで、原爆投下が回避されただけであった。
近代、現代の戦争とは、誠に血も涙もない。鬼畜の所業だ。
今、ロシア航空、フランス、パリのテロの報復とばかり、シリア空爆が叫ばれているが、私はこの本を見て、テロ組織ではないシリア市民の恐怖を追体験したような気持ちになった。
テロは許せない。だが、正義の戦争もない。
正義の空爆はないと思う。
私たち日本人は、もう一度、あの太平洋戦争の悲惨を思い起こさなければならないのかもしれない。空爆の下にある無辜の人々の命と暮らしを思い浮かべる想像力をなくしては、日本人もまた、鬼畜と同類になってしまうのではないか……