『葛飾北斎 世界を驚かせた浮世絵師』著/芝田勝茂

七十二歳にして「富嶽三十六景」をかいて江戸っ子の度肝をぬき、すべてのものを「絵」というわくのなかにうつしとろうとした北斎アメリカの有名な雑誌は「この一千年間で、世界の人びとに影響をあたえた百人」の中に、日本人からただひとり、葛飾北斎を選びました。かれこそは、今、世界中の若者に愛されている、日本のマンガ文化の先駆けでもあったのです。(BOOKデータより)
北斎は凄い〜と、日本人なら皆知っているけれど、どれほど凄いのかは、それほどわかっていなかったのかもしれない…と、この本を読んで思いました。
北斎の人生を、幼少時代から丁寧に追ったこの物語は、北斎の凄味を、面白く愉快に、如何なく語り尽くしてくれた気がします。
一方で、ある意味、一種の推理小説のようでもあり、これを読み終えた人は、きっと「あ、そうだったんだ!」と手を打つことでしょう。謎の浮世絵師といえば、思い至るあの人、あの人はいったい……と。
それを知りたかったら、ぜひ読んで下さい。
芸術家として、世界的に有名な北斎ですが、実はそれだけじゃないのです。お上に逆らえば、首が飛ぶ江戸時代に、百姓や町人など、市井の人々にこそ、愛と敬意を注いで生きたこんな凄い日本人がいたことは、今の日本人の誇りでもあります。
どの時代でもえらそうにする政治家、官僚たち(江戸時代は武士ですが…)より、どれほど市井の人々が見事だったかも、この物語で、再発見できると思います。
さすが、私が常々、敬意をこめて、「兄上」とお呼びしている芝田勝茂さんです。子ども向きの伝記だとなめてかかってはいけません。