『花あかりともして』#出版ワークス 著/服部千春・絵/紅木春


12歳のわたしが昭和18年、ユウガオの花咲く季節へ。
70年の時をこえる不思議な夢で出会ったのは、出征する父と、その帰りを待つ家族の歴史だった……。
花禁止令や京都空襲など、いまだ知られざる史実に光をあてた物語を、人気児童文学作家がみずみずしい感性で現代の読者たちにおくります。花禁止令とは…昭和16年10月の農地作付統制規則公布により、食料以外の農作物を育てることが制限されました。違反者には国家総動員法による罰則がありました。実施の度合いは地域で差がありましたが、戦局の悪化や、昭和18年8月の第2次食糧増産対策要綱の閣議決定により、「不急作物」とされた花を育てることへの統制はさらに厳しくなりました。 (BOOKデータより)

私自身が戦時物語『ちいやんの青い空』#ポプラ社 を入稿したばかりで、まだあの時代から帰って来れてないような精神状態で、このところ読みたい本が一杯積み上がっているのですが、きちんと現代へ帰らないと、読めない本も多くて、まず読んだのがこの本でした。
戦時物語といっても、現代っ子がすっと入っていける美しいファンタジーです。
私もファンタジー作家でもあるのですが、『ちいやんの青い空』にはファンタジー要素はほとんど加えませんでした。それは、私が書いた舞台が大阪大空襲だったからです。ここへは、ファンタジーを入れ込んではいけないと決意して、徹底して真実を基盤に書きました。
だからこそ、この物語もファンタジーと言っても、甘ったるいものではありません。辛く苦しい時代、「花を植えるなど非国民!」とののしられた時代に、美しく咲いた水仙の花を貰ってくれた田中さんのおばさんのリアルなシーンなど、泣きそうになりました。
ほかにも、ファンタジーとはいえ、まだ心が戦時にいる私にとっては胸に迫るシーンが数々ありました。
あの時代を、現代の子ども達に知ってもらわなければ! そして、それができるのは、私達児童文学者だと思います。あの恐怖の時代が又やって来ないように、心に残る物語をありがとうございました。親子で読んでほしいと思う一冊でした。