『あぐり☆サイエンスクラブ』シリーズ 著/堀米薫

あぐり☆サイエンスクラブ:春 ~まさかの田んぼクラブ!?

あぐり☆サイエンスクラブ:春 ~まさかの田んぼクラブ!?

私立中学受験をあきらめ、ちゅうぶらりんな日々を送っていた五年生の学。ある日、ぐうぜん「あぐり☆サイエンスクラブ員募集」のチラシをひろう。「野外活動。合宿あり」――おもしろいことが待っていそうな予感。学は早速入会を申し込むが、なんとクラブは一年かけて米作りを経験する「田んぼクラブ」だった――! (BOOKデータより)
農業は科学だと、学んでいく子どもたち。現代の教育体制のみに取り込まれて、不幸せそうな優等生の兄、博の姿こそが現代の都会の子どもたちかもしれないと思いました。
それに引きかえ、肉体労働のしんどさはあるのものも、ふとした日常の瞬間に、あぐり☆サイエンスクラブの子どもたちが見る美しい命の輝きこそが、本当は、都会暮らしの私達こそが出会わなければならない景色ではないのか……と思いました。
儚く厳しい命の輝きを目にする喜びを、この本と共に、都会の子どもたちに(できれば親子に)出会ってほしいと思いました。
「カエルの鳴き声は、命の叫び」という言葉に、感動するのは子どもばかりではありません。
あぐり☆サイエンスクラブ:夏 〜夏合宿が待っている!

あぐり☆サイエンスクラブ:夏 〜夏合宿が待っている!

学と雄成、奈々は「あぐり☆サイエンスクラブ」の仲間だ。学たちは種まきからずっと稲の成長を見守ってきた。青々とした田んぼの上をふきわたる青田風。「草取り」「中干し」「花掛水」――お米を取るためにこんなに手間がかかっているなんて! 田んぼに関わるようになってから、三人が少しずつわかってきたことだった。(BOOKデータより)
あぐり☆サイエンスクラブの夏編です。
農業は、自然との闘いであり、自然との共存でもあると感じさせてもらって、幸せな気持ちになりました。かつて、猫が人間の作物を襲う鼠を退治してくれるので、世界に歓迎されたと同じに、毒のない蛇のアオダイショウもまた、農家にとっては味方だったのですね!
人間だけが高尚だと思っている科学主義の人間は反省してもらいたいと思いました。地球の命の豊かさこそが人を活かし、人を護ってくれているのだと……。
田んぼのただよう、ご飯を炊く匂い、嗅いでみたくなりました。あんな甘い美味しそうな匂いがしたら、カメムシだって、お米の汁を吸いたくなりますよね。人間にとって害虫なのか、益虫なのかはともかく、子どもがカメムシの気持ちがわかるような気がする文学なんて、めったにありません。
読後、青々とさやぐ田圃を吹き過ぎる「青田風」が、心の中を吹き渡ったような気がしました。