『手塚マンガで憲法九条を読む』#子どもの未来社


この本は、子どもたちに読んでもらいたいと思って、発売されてすぐ買って、息子に手渡しました。でも、私ももう一度読みたいなあ、娘にも読ませたいなあと思っていたら、手塚さんの担当編集だった野上暁さんが、二刷りを送って下さいました。もう一度読み直してみて、まず、自分の青春を思いました。漫画少女だった私は手塚治虫先生の専門誌「COM」の漫画家希望の若者たちが集まっていた「ぐら・こん関西支部」の会員だったのです。
その頃の手塚治虫さんといえば、神さまみたいな人でした。でも、この本を読んで、本当に神さまのように貴い方だったんだ…と知りました。この一冊に描かれたマンガには、鉄腕アトムも出てくるし、ブラックジャックも出てきます。手塚さん自身をモデルにした若者も登場します。戦時の物語もあり、SFもありますが、貫かれているのは「反戦と平和」そして、戦時には、ゴミのようにあつかわれた「人の命の尊さ」なんです。少女時代、何も知らずに人気漫画家だというだけで憧れていた手塚治虫さんが、こんなに人として素晴らしい方だったんだと知って、わずかでも、手塚さんのそばにいた自分の青春時代を誇りたくなりました。気付けば、「ありがとう、手塚先生」と、お礼を言ってました。私自身、この夏は、戦時子どもだった実母をモデルにした『ガラスの梨 ちいやんの戦争』#ポプラ社 を書きました。その中で願っていたこと、書こうとしたことこそが、反戦と平和、人の命の尊さでした。なんと、現世では、遠い憧れの方にすぎなかったのに、手塚先生が彼岸に行ってしまわれてから、ある意味、同志として出会えるなんて、奇跡でした。あの戦争で亡くなった人たちが、手塚先生に出会わせて下さったのかもしれません。

手?マンガで憲法九条を読む

手?マンガで憲法九条を読む

手塚治虫の永遠のテーマ「生命の尊さ」が貫かれた珠玉の七編、未来を見つめ続けた手塚治虫の確かな眼差しが今、憲法九条を問い直す。作品解説は全国「九条の会」事務局長の小森陽一氏。(BOOKデータより)昭和十六年、大阪。小学三年生の笑生子は、国民学校に通う女の子。働き者のお父やん、お母やん、気丈できっぱりした澄恵美姉やん、心優しい成年兄やん、あまえんぼうの弟・春男、そして、かわいい子犬のキラ…そんなあたたかい家族にかこまれた幸せな日常は、暗い戦争の影に侵されはじめていた―。著者の母親をモデルに、徹底した取材のもと、戦争の悲劇と家族のきずな、人間のたくましさをえがく、今こそ読んでほしい戦争児童文学! (BOOKデータより)