『車夫』#小峰書店 著/いとうみく



〆切に追われてアップできなかったいとうみくさんの車夫シリーズ。完結を祝してアップ致します。
父の出奔の上、母までがいなくなって、いわば世の中に一人ぼっちで放り出された十七歳の少年、吉瀬走が、高校中退して始めた仕事は人力車の車夫であった。その走を巡って連なる人間模様を描いた物語です。
第一巻を読み始めて、冒頭から、涙ぐんでしまいました。というのは、母を亡くした悠木乃亜が再婚しようとする父とその恋人のデートを追っていました。さらに足を靴擦れしたけれど、痛みをこらえて追っているところを、走の人力車に乗せてもらうのです。「尾行にはむきません」とつけられた章タイトルの中、乃亜の葛藤……に接する走の爽やかさに、ついつい私は微笑んでしまい、同時に涙ぐんだのかもしれません。つまり、冒頭一番、ハートを掴まれた物語でした。
二巻では、この乃亜が父の再婚を受け入れる物語が挿入されていますが、この二巻三巻あたりから、私は人力車に乗ったことがないのに、俥(くるま)に乗っている人が感じる風や音を感じるようになってきました。

キシッキシッ
たったったったったっ
キシッキシッ

ほら、走の走る姿と風、俥のきしむ音が聞こえませんか?
そして、この物語の帯の言葉は、どの巻も物語を語ってくれています。下手なネタバレや感想を語るより、それぞれの帯に語られた言葉の意味を知りたかったら、ぜひこの物語を読んで下さいね。

車夫 (Sunnyside Books)

車夫 (Sunnyside Books)

車夫2 (Sunnyside Books)

車夫2 (Sunnyside Books)

車夫3: 雨晴れ (3) (Sunnyside Books)

車夫3: 雨晴れ (3) (Sunnyside Books)