純子さんと朋子さんの新刊ご紹介

『家庭教師りん子さんが行く!』作 加藤純子(ポプラ社
家庭教師りん子さんが行く! (ノベルズ・エクスプレス)
りん子さんは、鉛筆のようにひょろりとして、鼻の上の赤いフレームのメガネ、へんてこりんな花柄のロングスカートの女の人。ほんとは女子大生なんだけど、ダサくて地味で、そんなふうには見えません。でも、りん子さんには不思議な魅力がありました。子供たちがイライラしたり、ぎしぎししたり、切なかったり、辛い思いを抱えていると、あれれ、いつのまにかドジっぷりに笑わされて、気がつけば、ふわりと春風に乗せられてしまうのです。友達で悩むナホミも、アイドルになりたいリナも、気弱な自分に苛立っているテツも、りん子先生に教えられるとか諭されるとかいうより、りん子先生自身が戸惑ったり焦ったりしつつ、一緒に向かい合うことで、悩みを乗り越えてゆくのです。
この物語を読んでいて、私は十代の頃を思い出しました。自分が何者かわからなくて、自信もなくて、人とどう向かい合ったらいいかもわからなくて、うろうろ、うじうじ、落ちこんだり居直ったり、でも、一生懸命だったあの頃。きらめく青春だなんて、ドラマの中だけの嘘だと思ったあの頃。でも、りん子さんを見ていて思いました。ああ、あの日々こそが青春だったのだと。平明な文章で、子供心に寄り添って描かれるので、読者の子供たちは本当にりん子さんに出会えたような楽しさが味わえるのではないでしょうか。まるで、作者の純子さんご自身のような、ゆったりした優しさに満たされた物語でした。この本はぜひぜひ学校図書館に揃えてほしいです。
シャトルバスにのって』作 飯田朋子(新日本出版社
シャトルバスにのって
咲記、カオリ、真奈の三人が計画したピクニック。ところが、姉のるきちゃんを連れて行くはめになった咲記は憂鬱です。だって、るきちゃんはすごくマイペース。こうと思いこんだら鉄の女。もしも、友達に迷惑をかけたら? もし友達がいやな顔をしたら? るきちゃんは中学生だけれど、全然そんなふうには見えません。るきちゃんは明るくて元気だけれど、他の人とはだいぶ違うのです。
悩みながら待ち合わせ場所まで行くと、そこには真奈の友達恵子ちゃんまでがいて、恵子ちゃんは、るきちゃんとは初対面なのです。咲記の心配はさらに大きくなりました。
はらはらどきどきの出発。シャトルバスに乗って行く仲良し少女たちのピクニックがドラマチックに描かれます。観覧車も、ゲゲゲの鬼太郎も、お弁当も、たこ焼きも、どれも楽しそうで美味しそう。「こんな楽しかったこと初めて」という恵子ちゃんの言葉が、すーっと心に入ってきました。「ほんとにほんとに、楽しかったねっ」と、私も本を閉じました。この本もぜひ、子供たちのために図書館に揃えてほしいです。