ともかく連休明けには

連休明けには、ようやく『忍剣花百姫伝7・愛する者たち』(完結編)を入稿します。いやあ、長かったです。しかも、すべての伏線を解決するためには、前回よりやや長編になりました。同時進行で『時空忍者おとめ組!3』を執筆中ですが、この締め切りが迫っているので気が気ではありません。
そのあとも11月ぐらいまで息がつけません。
そんなこんなで、12月になるまでおそらく本も読めないと思いますので、すでに読ませて頂きながら、ご紹介できていなかったご本をご紹介させて頂きます。
赤い月、廃駅の上に (幽BOOKS)
まずはサイン入りで頂いた感激のご本、有栖川有栖先生の『赤い月、廃駅の上に』です。頂いてすぐ読んだのですが、時間に追われなくなってからご紹介をと考えていたら、どうやら年末になってしまいそうなので、それではこの感激が薄れてしまいます。というわけで、〆切を蹴散らして(いや、比喩です、蹴散らしていませんから。担当さま…)、ここでご紹介させて頂きます。
実のところ、私はかなり怖がりです。でも、牡丹灯篭のような凄艶なホラーは好きだったりします。なので、恐怖と期待が入り混じった気持でこのご本を読ませて頂きました。
『赤い月、廃駅の上に』は、有栖川先生の作家生活20周年記念出版作品です。20周年! おめでとうございます〜 
そういう記念的作品が面白くないはずはありません。
廃線跡、捨てられた駅舎。赤い満月の夜、異形の者たちが動き出す。有栖川有栖の新天地! 恐ろしくも、どこかやさしくせつない10の奇談。」
と、帯に書かれているとおり、10作の短編小説が掲載されています。でも、それはばらばらの短編ではありません。どれも、鉄道奇談小説とでもいいましょうか。見事にレールに沿って書かれているのです。怖さがじわじわっと迫ってきます。でも、怖さのなかに、切なさや優しさがちりばめられていて胸を打たれるのです。
ことに、私が好きだったのは「夢の国行き列車」「海原にて」「貴婦人にハンカチを」「途中下車」です。なんともいえない優しさと切なさに彩られた物語でしたから。そう、鉄道奇談といいましたが、海の話もあるのですよ。海にまでつながるレールはいったい? って、期待がふくらむでしょ。
そのほかの作品もどれも面白いです。密林の濃い匂いがただよってきたり、この世の果ての橋が目に浮かんだり……どれも、読んでのお楽しみです。
表題の「赤い月、廃駅の上で」も、その妖しい風景描写は目に浮かぶようで酔いました。で、でも、こ、これは怖すぎます(ぶるぶる)。
ホラー好きの方も、そうでない方にも、おすすめです。ただし、子どもたちはトイレに行けなくなるから読まないでね。