全国同人誌連絡会「季節風」105号

季節風」が届きました。
ぶ、分厚い!
今号の投稿作品のほかに、秋の季節風大会の推薦作が掲載されているからです。
創作は読んだものまだ読めていないものがあるのですが、それにしても、季節風は凄いと思ってしまいます。こんなに力量のある書き手が沢山集っている場所は、おそらく、季節風をおいて他にないでしょう。
そして、今回の特筆することは、後藤竜二代表亡き後、代表をつとめて下さることになったあさのあつこさんの投稿作品評がたっぷり読めるところです。
これまで、辛口で知られてきたあさの選評の愛が深まったことに気づかれましたか? これは、あさのさんが本気で季節風を支えていこうと決心されたからだと、私は感じました。
あさのさんが頑張って下さる限り、私も季節風を支え続けようと思っています。後藤さんがお元気でいらっしゃる時は、そろそろ私がでしゃばらなくても、若い方々にバトンタッチしてもいいのではないかと思ったことがありました。
京都に住んでいるので、編集会議はいつも遠距離であり、なかなか思うように、後藤さんや高橋秀雄さんたちの手助けができないのが気鬱でもありました。
なんといっても、後藤さんは若い書き手、新しい書き手に囲まれていらっしゃるのが一番似合う人でしたし、そういう後藤さんを見るのが、私はとても好きでしたから。
でも、予想だにしなかった後藤さんの急死……に、すべてがひっくり返りました。
初めに思ったのは、なんて、私は贅沢だったのだろうと思うことでした。後藤さんというビクともしない大黒柱がそびえていてくれたので、私は進退も自由だったし、勝手な行動ができたのです。
それは、おそらく、私だけでなく、古い編集委員はすべて同じことを感じているのではないでしょうか。
そう、後藤さんを失ったことで、新旧の編集委員も、会員も、みんな目が覚めたのです。私たちは、なんて大きな懐の中でぬくぬくと生きてきたのだろうと。
その後藤さんが抜けてしまった穴を埋めるには、みんなが力を合わせるしかないのです。その旗を掲げる役割を、一番しんどい役割をあさのさんは引き受けて下さいました。協力しないと、罰が当たります。というか、後藤さんが怒ります。
というわけで、105号の感想を少し。
今回は嬉しいことに、評論が二作掲載されました。評論に力を入れたいというのは、後藤さんの願いでしたから、きっと後藤さんも喜んでいらっしゃると思います。
尼子十勇士伝―赤い旋風篇土山優さんの『尼子十勇士伝 赤い旋風』は、ぜひ『尼子十勇士伝 赤い旋風』を読了後、読んでほしいです。そうでなければもったいない。私は、最後の三行に泣こうかと思いました。山中鹿之助後藤竜二が重なって……。
野澤朋子さんの「現実を超えていく物語と言葉の冒険」は、新旧児童文学、ノンフィクション、映像作品、翻訳文学など幅広く取り上げた評論でした。そういう意味では、土山さんの一作を掘り下げる濃さとは対照的に、キーワードを繋げながらその世界を拡大していく評論といえるでしょうか。これはこれで、面白かったです。
私はこの対照的な評論を書くお二人のファンでもあります。だからこそ、お二人に、さらに挑戦してほしいです。
土屋さんには、立川文庫から始まる現代の歴史児童文学、時代ファンタジーなど(季節風でも時代小説を書いている作家は後藤竜二あさのあつこ、吉橋通夫…他、決して少なくありません)、多くの作品の歴史的評論、さらにその一作ずつを深く濃く評論してみてほしいと願います。
野澤さんには、季節風から生まれ出た作品群、あるいは作家その人を追った大きな評論を書いて頂きたいと願います。
あさのあつこさんを筆頭にこれほどの作家群がいながら、素晴らしい評論家だった大岡さんが亡くなった後は、季節風の作品群あるいは季節風の作家を深く掘り下げた評論は生まれていません。そのことを、後藤さんも残念に思っていらっしゃいました。
作家、後藤竜二を掘り下げて下さる評論は、もはや土山さんの他にはないと、これは衆目の一致するところでしょう。
さて、多くの創作については、編集委員の投稿作品評がありますので、ここでは控えますが、今回、この投稿作品評が見づらかったです。やはり、これまでのように、委員ごとに作品評をまとめて掲載するのが見やすいと思います。
一方で、一つの作品についての違う見解を掲載するのはいいと思いました(私も担当ではないけれど作品評を書きたい作品がこれまで幾つかありました)。講評担当作品の他に、そういうものも採用して掲載してもらえればいいなと思いました。複数の作家に評されることで、書き手も励まされるでしょうし、また、自作を客観的に見る力になります。この場合、一つの作品に一つ以上の評があれば、そういう質の作品だということも伝わっていいと思います。
満場一致で評価する作品はあっても、満場一致で全く評価されない作品はないのですから。
最後に、今回の編集委員、飯田朋子さん、工藤純子さん、こんなに分厚い季節風の編集、ほんとにほんとにお疲れさまでした〜
あ、もうひとつ、最後の最後に、『忍剣花百姫伝』全七巻の書評を、あだちわかなさんが書いて下さいました。ありがとうございました! わかなさんがいいとおっしゃるなら、その全文をいつかブログでご紹介したいと思います。
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