『忍剣花百姫伝』奇跡のはじまり

【花百姫・かおひめ/絵/スカイエマさん】
昨夜、シリーズ完結編『忍剣花百姫伝(七)愛する者たち』のあさのあつこさんの解説が届きました。
その解説を何度も何度も読み返しながら、涙が出そうになりながら、この物語が、今こうしてあるのは、奇跡ではないか…と思いました。
振り返れば、「花百姫伝」は、当時の大人気作家さんたちが書かれているエンターティンメント文庫Dreamスマッシュ版の新シリーズとして、私が初めて書いたエンターティンメントでした。
ところが、大々的に売り出されていたDreamスマッシュ文庫自体が、各社文庫よりやや高めの値段設定だったせいか、売れ行きがふるわず、すべての作家さんたちの本がシリーズ解体や移動になりました。
【八忍剣一ノ者、天兵・てんぺい】
「花百姫伝」もあわやシリーズ途中打ち切りかという事態に、花百姫を守って下さったのは、当時のO編集長でした。それが、最初の奇跡だったのです。
きっと、この業界にいらっしゃる方なら誰でもご存知のように、この業界では、売れなければ打ち切りが常識だからです。それが、その物語の責任ではなく、何かしらの条件が不幸に働いただけだとしても、そういう時の決定は非情です。

【八忍剣八の者、霧矢・きりや】
でも、そんな中、「花百姫伝」は、O編集長に守られ、完結することができたのです。
そして、二つ目の奇跡は、小中学の図書館で起こりました。少年少女たちの口コミだけで、シリーズは爆発的に読み継がれ始めたのです。図書館で読んで感動して、自分のお小遣いで、シリーズをそろえて買ったというお便りや書き込みがどんどん増えてきました。
けれども、このシリーズは完結まで五年かかっています。本というのは、最初の一年から三年までに、目立って売れなければ、売れない本という烙印を押されて消えてゆく運命なのです。
【八忍剣三ノ者、美女郎・みめろう
どれほど、熱いお便りが届こうが、「花百姫伝」の運命も決まったようなものでした。
ところが、このシリーズを一般書の文庫化してみてはどうかと、ある大きな出版社の方から言って頂く機会がありました。
「よし、そんなら、そうしよう!」と、ポプラ社さんにお伝えしました。
その時、また奇跡が起こったのです。当時、偶然にも、あさのあつこさんが読売新聞で『忍剣花百姫伝』シリーズを取り上げて下さり、話題になっていたこともあって、一般文庫化はポプラ社さんがして下さるということになりました。これが三度目の奇跡です。
そして、2012年5月から隔月に2013年5月まで、全巻発行に決まったのですが、二巻から六巻まで、令丈ヒロ子さん、香月日輪さん、那須田淳さん、ひこ・田中さん、石崎洋司さんという著名な方々が解説を書いて下さり、それを読むほどに、私は感動して、自分が本当にいい仕事をしたのだと信じられるようになりました。そして、完結編の解説が、文庫化のきっかけを作って下さったともいえるあさのあつこさんでした。(完結編はきたる五月に発売されます)
【八忍剣四ノ者、天魚・あまご】
最後の解説を昨夜、何度も読みながら眠って、今朝になって思いました。
こうして、素晴らしい方々に解説を書いて頂けたピュアフル文庫がここにあるのは、四度目の奇跡ではないのかと。
解説を書いて下さった方々は、すべて超多忙な作家さんです。その方々が快く引き受けて下さり(どの方も文庫化が決まってすぐ最初にお願いした方々なんです!)、愛のあふれる胸が熱くなる解説を書いて下さいました。こんな贅沢な幸せなシリーズがあるでしょうか……もう、奇跡としか思えません。
ということは、五度目の奇跡も起こるかもしれません。うん、起こらない方がおかしい…と思えるようになりました。この物語の旅はつらく、長きにわたっています。でも、もうだめかという時に、いつも不死鳥のようによみがえって羽ばたいてくれた物語でした。
【八忍剣五ノ者、夢候・ゆめそうろう】
大宣伝をしてもらったわけでもなく、大作家の本でもないこのシリーズがよみがえってきた歴史は、ただ、周囲の人々からそそがれた愛だけの力だったのではないかと思うのです。
ですから、五度目の奇跡は、きっと新しい読者さんの愛からはじまるのではないかと思っています。

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