『歌集 集真藍(あづさあゐ)』著/寺田惠子(ながらみ書房)


集真藍―歌集

集真藍―歌集

寺田惠子さんから『集真藍』が届いてから、ずいぶんになります。
すぐご紹介したいと思いながら、思わぬ病気になったり、締切に追われたりして、今になってしまいました。
とても美しい、誰もが自分の人生を振り返りたくなる歌集です。
この本のタイトルになった「集真藍」についての歌一首、ご紹介します。
藍色の 小花を集め 咲く紫陽花 その花の名は 集真藍とか
そう、集真藍とは、紫陽花のことなんです。なんて美しい表現でしょうか…
そしてまた、人生の山谷越してきた人にしか詠めない歌の数々も。
その一首。
人生に 消してしまひたき 時あれど その時なくして 今のわれなし
酔芙蓉 咲かずにあれよ 咲いたなら 胸の奥には 紅い灯ともる
胸の奥に紅い灯がともっては、恋の情熱もよみがえるかもしれないけれど、悲しみや辛いこともよみがえってしまうから、いっそ、灯らないでほしいと思うのも、年を重ねてこそ感じる人生の切なさではないでしょうか…
美しい表紙絵は、鎌田暢子さんです。