『二日月』著/いとうみく・絵/丸山ゆき

いとうみくさんの『二日月』が2016年 第62回青少年読書感想文全国コンクールの課題図書になりました。
今年夏までは超多忙で、読みたい本をなかなか読めずにいたのですが、課題図書になったこの機会を逃してはならぬっと決意、昨夜読みました〜(まだまだ読みたい本は山になっているのですが、6月〆のアンソロジー1本、7月〆単行本の原稿2本など、えらいことになっており、作家の皆さま、どうぞ気長に待って下さいまし〜m(_ _)m

さて、それはともかく、『二日月』です。

二日月 (ホップステップキッズ!)

二日月 (ホップステップキッズ!)

あたしの妹、1歳の芽生。まだ歩けないし、立てないし、ハイハイも、おすわりもできないし。そういうことができるようになるかもわからない。だけど、芽生はあたしのそばにいる。あたしはいつも、芽生のそばにいる(BOOKデータより)
障害のある妹が生まれたことで、悲しみに沈む家族が、少しずつ前を向いて笑顔を取り戻す過程が、実に丁寧に描かれていて、大人が読んでも感動するに違いないと思う。
けれど、これが優れた児童文学だという証明は、まず子供の視点や日々の暮らし、それを受け止める子どもの思いに作り事や嘘を感じられないことだ。
この家族のお母さんが素晴らしいが、それもまた、子どもの視点で描いていることで、ただの理想の姿ではなく、悩み苦しんだからこそ至ったお母さんの姿だと、子ども読者にもわかるだろう。
苦痛は不幸だけを呼び寄せるのではなく、豊かな大きさをも形成させるのだと、物語を通じて読者は知る事ができるのではないだろうか?
きめ細かい取材をこなし、さらに繊細で豊かな包容力を持った作家でないと書けない物語だ。この重いテーマを本にしようと決定した版元の心意気にも、これを書こう決めた作家の思いにも、拍手を贈りたい。