新選組づくしの三日間

ようやく、帰ってきました。もうくたくたで、昨夜はお風呂に入って寝るだけと思っていたら、岩崎書店のYAフロティンア『霊少女清花1 時空より愛をこめて』の表紙カバーの色校(というかほとんど完成したもの)と、『こまじょちゃんとあなぼっこ』のゲラが届いていて、ざっと目を通して寝ました。清花の表紙はすごくいいです〜みなさん、どうぞお楽しみに。
そうそう、そういえば、日野市の書店(そんなに大きくない書店)で、YAフロティンアの第一弾、横山充男さんの『鬼にて候』や令丈ヒロ子さんの『S力人情商店街』などが平積みで積み上げてありました。すごいです。
で、まあ、今日はこまじょちゃんの校正をして、三日分たまっている家事をして、さらに、取材中お目にかかった方やお世話になった方へのご挨拶などを書いたりする予定です。なので、三日間のご報告はぼちぼちということで、今日は取材初日の日記です。
新選組取材 初日6月15日
早朝いろいろ雑用を済まして午前8時に家を出て、息子の車で駅まで送ってもらい、日野へ到着したのが午後1時頃でした。
あの沖田総司が時を超えてやってくる拙著『月下花伝 時の橋を駆けて』と、侍渋扇二本をおみやげに、

月下花伝―時の橋を駆けて

月下花伝―時の橋を駆けて

この日は日野にある井上源三郎資料館で近藤勇生家ご子孫の宮川清蔵さんと井上源三郎ご子孫の井上雅雄さんと待ち合わせだったのですが、京王線が事故で遅れていて、いらいらしながら日野駅に到着しました。20分ばかり遅れたので資料館へお電話すると井上さんの奥様が出られて「道がわからなくて迷っていらっしゃるのではないかと心配して、今、お迎えに参りました。駅を出た信号あたりで待っててください」とおっしゃいます。慌てて駅の外へ出てすぐ、横断歩道を見ると、大柄の男性がお二人、威風堂々こちらへ歩いていらっしゃいます。まぎれもなく、宮川さんと井上さんでした。お二人は現在も古流剣術天然理心流の師範であり剣士なのです。そのお二人が並んで歩いていらっしゃると、洋服姿でも普通の人たちと違うのです。なんというか、ただ歩いていらしても、腰の据わり方、足運びが違うのです。さらにお顔付きがどう見ても侍なのです。いえ、宮川さんなどはにこにこ笑っていらっしゃるのですが、その笑顔もまた侍なのです。現代に侍に出会える、こんな僥倖はあるでしょうか。と、それは、密かな私だけの感慨です。
その後、井上さんのお車で、宮川さんともご一緒にあちこちご案内して頂くことになりました(この話を17日の沖田総司忌でお目にかかった方とお話ししましたら「なんて贅沢な取材なんでしょう!」と羨ましがられました)。
で、この日はまずは井上家の菩提寺へ案内して頂き、かの新選組六番隊組長(※実は正式な呼び方は「組長」なのです。でも、現代はちょっと違うイメージになってしまうので多くの場合、隊長と呼び変えています)井上源三郎さんのお墓へお参りさせて頂き、天然理心流の奉納額がある近江神社へ寄ってから、井上源三郎資料館へ。その資料館での井上さんのお話の面白かったこと!これは作品にぜひ生かしたいので内容は秘密です。
その後、日野本陣へ。日野本陣は近藤さんや土方さんのスポンサーでもあった佐藤彦五郎さん宅でもありました。ですから、ここにはまた新選組こぼれ話がいっぱいあるのです。軍将として立ち寄った土方さんが疲れて仮眠した玄関部屋や、病身の沖田総司さんがこんなに元気だといって相撲のしこを踏んで見せたという聞くも涙の玄関板間、市村鉄之助さんが隠れ住んでいた部屋など、それはそれは盛りだくさんです。そこでは、日野史跡の公認ガイド斧川さんのお話がこれはまた面白かったのです。
そして、この日高幡不動へ到着した時は4時を過ぎてしまったので、ここでは土方さんの銅像だけ見て、土方歳三資料館の前を通って(この日は休館日)、土方さんのお墓がある石田寺へ。土方さんのお墓をお参りをさせて頂きました。その後、土方さんが幼少期に遊んだという、あさ川を眺め、若き土方さんが売り歩いていたという石田散薬の打ち身の薬草、牛革草が自生しているのを見せて下さるために、井上さんはあちこち水辺を探索して下さいました。そして、見つかったのです。水辺で! それを井上さんが自ら手折ってきて下さり感激しました。これは、ホテルへ帰ってから押し花にして家まで持ち帰りました。この日半日、井上さんと宮川さんがご一緒して下さり、車でも外でもお二人のお話を聞けたことが幸せなことでした。
夕方、ホテルまで送って頂き、別れ際、明日は一人で近藤勇さんのお墓へお参りするつもりだといった私に、宮川さんが「すみません。本来は私がご案内させて頂かねばならないのですが、明日は他用があり誠に申し訳ない」とご丁寧におっしゃいます。「とんでもない。充分にして頂きました!」とこちらこそ恐縮してお礼を申し上げました。取材のいろいろの手配をして下さり、井上さんにお願いして下さったのも宮川さんです。ほんとに、お世話になりました。なのに、そんなふうにおっしゃるのです。古武士の潔さ、誠実さをそのまま天分としてお持ちなのです。宮川さん、井上さんにお目にかかって感じたことは、近藤さんや井上さんはまさに、こういう風格の方だったのではという思いです。人を斬る新選組というイメージの奥に隠された、人として侍としての誠をお二人にかいま見た気が致します。宮川さん、井上さんはここを見てはいらっしゃらないけれど、心からお礼申し上げます。ほんとにお世話になりました。ありがとうございました。
と、今日はここまで。6月16日の日記はまた。