新選組づくしの三日間 其の二

新選組取材6月15日夕
初日の夕方、宮川さんと井上さんとお別れして、ホテルで少し休んでから、近くの高幡不動をひとり散策しました(土方さんの銅像があるところです)。
すると、どうでしょう。この日、井上さんが探し回って見せて下さった牛革草が、土方さんの銅像の後ろに植えてあるのを見つけました。それ自体は自生ではなくわざわざ植えたものですから、実際はそんな所に生えないということが、この時の私にはわかりました。だって、だからこそ、井上さんは水辺の自生の牛革草をさがしてくださったのですから。ともかく、銅像の後ろの牛革草には、なんと、ピンクのつぼみがついていたのです。井上さんは「牛革草は葉が牛の顔に似ていて、花の時期になると牛の顔に目が出てくる」とおっしゃって、自生の葉に目が出始めているのを見せて下さったのですが、そこではまだ花がついていなかったのです。でも、銅像の後ろにはピンクの花が開き初めていました。その時、ああ、土方さんに見せてもらえたと思いました。
その直後でした。それはものすごい夕焼けが空を染めたのです。
わずかの時間でしたが、見わたすかぎり、血のような深紅の雲でした。
茜空ならこれまでも見たことはありましたが、あんな空は初めて見ました。
その時、ああ、これは新選組の色だと思いました。


新選組取材6月16日
この日は、ひとりで近藤さんのお墓へ行く日です。
でもその前に、前日、時間が遅く入れなかった展示館のチケットを井上さんから二枚頂いていたので、それをにぎって高幡不動へ行きました。最初の展示館に入って、最後まで来たときです。目の前(ほんとに触れる距離です)に、重要文化財のそびえるようなお不動さまがいらしたのです。この時、高幡不動ではお不動さまを新しくつくって、古い重文のお不動さまは本堂から展示館へ移されたようでした。おそらく、その記念の展示会だったのです。つまり、私は本来は入れないお不動さまの祠の中へ踏み入ったことになります。それも、入館者はほかにもいらしたのに、お不動様の前ではどなたもいらっしゃらず、私が長い間見上げていたのにもかかわらず、誰ひとり、祠に入って来られなかったのです。
お不動様と二人っきり(お不動様の童子お二人はいらっしゃいましたが)。ほんとにすごすぎる展示でした。あまりのすごさにしばらく呆然としてしまいました。お不動さまは、私がひとりでやって来るのを待っていて下さったような、そんな気がしました。
そして、もう一枚のチケットを持って大日堂へ行きました。すると、そこは「鳴り龍」のお堂だったのです。天井画の墨絵の龍の下で拍手をすると、龍が鳴くというか、天井がびびびーんと唸るように響くのです。それは不思議なことに龍の真下にいないと聞こえないのです。そうして鳴り龍は願いを叶えてくれるそうなのですが、それはそれは降ってくるような霊気のある龍でした。
あまりにもすごいものに次々迎えられて、もしかしたら高幡不動は私を招いていてくれたのかもしれないと思ってしまいました(ホテルも高幡不動のすぐそばだったのです)。新選組の取材に夢中で、高幡不動のことはすっぽり頭から抜け落ちていた私には、ほんとに、お不動様や天龍がいきなりご降臨されたかと思うような驚きでした。自分の守護神が波切り不動様だというのに、不信心なやつです……わたし。

そして、このあと、近藤さんのお墓へお参りに、京王線に乗って調布まで行くのですが、今日は遅いのでここまでにします。