年始め新刊祭り

これまでにご紹介していない新シリーズや新刊をご紹介をさせて頂きます。できれば、手元にあるすべてのご本をご紹介したいところですが、管理人の限界もあり、ここを覗いて下さっているだろうと思われる作家さんの御著のみのご紹介になります。どうか、ご了承下さいまし。
はなよめさん (ポプラちいさなおはなし)『はなよめさん』楠章子(ポプラ社
日常の一瞬を切り取っては、不思議なファンタジーの世界へ案内してくれる楠さんの三作目。これまでの短編連作ファンタジーでは、巣穴のような温かさや、闇の妖しさ、何ともいえないおかしみなどが光と影のように紡ぎ出される物語でしたが、今回は、どこまでも明るく優しい幼年童話です。美しいシーンが心に残ります。石井勉さんの絵も素晴らしいです。
ワルルルさん (くもんの児童文学)『ワルルルさん』畑中弘子(くもん出版
畑中さんの積年の思いを形にした物語。戦争と阪神大震災、どんな困難にもめげず、前向きに乗り越えてきたワルルルおばあさんの物語。明け方、空襲の爆撃で溶けだしたアスファルトに脚をとられ、人間のために働いていた馬は歩けなくなって倒れました。そのまま焦げて死んでしまった馬。その馬の肉を「すんまへんな。みんな、生きなあかんもんで」と、切り取って帰るワルルルさん。昼過ぎ、その馬は骨になっていたのです。みんなが少しずつ、生きるために肉を切り取っていったのでしょう。生きることの切なさ、戦争の罪深さが胸に痛く迫ってきます。その戦争も、大震災も乗り越えたワルルルさんの明るさに、きっと誰もが救われる思いがあるのではないでしょうか。
エリアの魔剣 (1) (YA!フロンティア15)『エリンの魔剣1』風野潮岩崎書店
風野さんの新シリーズです。魔獣が出没する魔の森、聖都エリアにあるという魔封剣「エリアの魔剣」、さらに、「守護の剣」。それらの剣の波動を込めた「魔封具」……と、のっけから、すごいアイテムがこの世界に存在することが語られます。主人公リランと親友ダキリスは、少年武術大会に挑むのですが、その勝利者に贈られる「覇者の剣」を見たリランに異変が……! 怒濤のように展開するハイファンタジーの世界。女の子も男の子も夢中になりそうな、異世界での摩訶不思議な大冒険。思う存分楽しめます。
生徒が生徒を募集中!?―学習塾グリーンドア (ポプラ物語館)『生徒が生徒を募集中!?』イノウエミホコ(ポプラ社
超マイペースな個人塾、グリーンドア。生徒はたった三名。先生は、ちっとも先生らしくないハルコさん。生徒はコタ、マナ、カエデの男子1,女子2の三人だけ。このままでは、つぶれてしまうと、三人が始めたのは生徒が生徒を募集する作戦。このひとつひとつのアイデアが面白いです。コピーライターの勉強にもなるかも。それぞれのこどもたちも個性があって、最後にみんなが考えついたコピーがとても良かったです。
雨ふる本屋 (単行本図書)『雨ふる本屋』日向理恵子(童心社
「雨には、この星の物語がつまっているの」誰かが忘れてしまった夢、「おしまい」の文字を書かずに、とちゅうになってしまった物語に、雨をかけるとできあがる「雨ふる本」。満たされないルウ子がまぎれこんだ「雨ふる本屋」……。市立図書館の本棚の通路を、カタツムリの後をついていってしまったルウ子。本棚の林をぬけると、そこは、いつのまにか、「雨ふる本屋」なのでした。パラパラ優しい音の雨が降りしきる本屋にいたのは、ドードー鳥とふしぎな女の人。時間がなくても、惹きつけられて読んでしまう不思議な物語です。