]『あきらめないでまた明日も』

本日の朝日新聞の朝刊に、岩田美津子さんの大きな記事が掲載されていました。大きすぎて、スキャナでは取り込めないので、写真でごめんなさい。

美津子さんと私はデビュー以来のお付き合いです。思えば、長いお付き合いで、このところは忙しさにかまけてお目にかかる機会を逸しています。でも、大丈夫。私と美津子さんには過去に濃いかかわりがあるのです。

この本『あきらめないでまた明日も』は、美津子さんの生い立ちから、ふれあい文庫を世界に広められるまでを描いた物語です。ノンフィクションですが、美津子さんの人生の波乱万丈、その明るさには、読んだ方みなさんが驚かれます。
この物語を書くために、私は美津子さんと二人で、美津子さんの故郷である福岡までご一緒し、美津子さんのご実家に泊めて頂き、さらにご姉妹のお家にも泊めて頂き、盲学校の先生、お友達からもお話を聞かせて頂きました。その時の思い出は、今も、私の生きる力になっています。障害があろうがなかろうが、人はなんと強くたくましく、繊細で美しいのだろうかと。打たれるような思いで見上げた、福岡の澄んだ月を忘れられません。
普通の人々は、目の見えない人には絵本はいらないと考えます。ですから、美津子さんが立ち上がるまでは、点訳された絵本はなかったのです。なぜ、美津子さんはそんなことを思いつかれたのでしょうか。それは、全盲の美津子さんの息子さんは目が見えたからなのです。
「お母さん、絵本読んで」とひざにのってくる子どもたちと一緒に絵本を楽しみたい。最初はそれがきっかけでした。
そのことを突き詰めれば、目の見えない子供も、お母さんと一緒に絵本を楽しむ権利があるはずだということに行き着きます。点訳絵本の会、ふれあい文庫はここに始まるのです。最初は、美津子さんと図書館の司書さんとの手造りだった点訳絵本が、大きな広がりを見せるのはそれからのことでした。
美津子さんはまったく目が見えないのに、身のこなしがかろやかで、いつもほがらかに笑っていらっしゃいます。大阪の道筋などは目の見える人間よりずっとくわしかったりします(方向音痴の私はいつも目的地に彼女に連れていってもらいます。いや、ほんとに)。
彼女の周りには、いつも人をほっとさせる明るい日溜まりがあるようでした。なにより、その秘密を知りたいというのが、私が書こうと思った動機でした。彼女の人生を描きつつ、思ったことは、誰もがどんなにいやでも、どんなに辛くても、自分の人生を生きなければならないということです。悲しみや苦しさを乗り越えて生きねばならないそれぞれの人生、その力になる種(たね)を、わたしはこの一冊にこめたかったのです。
『あきらめないでまた明日も』は、出版後、いろんな場所で推薦、紹介されました。
ざっとたどると、◆【朝日新聞】【読売新聞】など各紙に書評、記事など掲載◆千葉県夏休み課題図書◆千葉県読書感想文コンクール課題図書◆岡山県優良図書◆神奈川県優良図書◆茨城県推奨図書◆茨城県冬休み読書感想文課題図書SLBC(学校図書館ブッククラブ)選定図書◆栃木県優良推奨図書◆大人も面白い児童書推薦図書◆小学校の先生が小学生に薦める本……etc。
そして、岩田美津子さんご自身も、IBBY朝日国際児童図書普及賞、ソロプチミスト日本財団社会貢献賞、朝日社会福祉賞など世界的な大きな賞を受賞されました。
この大きく豊かな岩田美津子さんという女性に出会え、今も友人としてお便りを交換したりできることを、私はとても嬉しく思っています。そして、彼女が相変わらず元気で、ご活躍なさっていることに、喜びと元気をもらっています。その美津子さんのライフワークである点訳絵本や点字つき絵本の展覧会8月1日〜30日まで東京、銀座の教文館であります。展覧会は入場無料。美津子さんの講演会もあります。講演会(入場料1000円)は、予約申し込みが必要です。申込みは、教文館03-3563-0730。また、大阪ふれあい文庫の連絡先は06-6444-0133です。
どうか、みなさま、この機会に、点訳絵本に、点字付き絵本に触れてみてください。岩田美津子さんという方を知ってみてください。
人生観が変わるかもしれませんよ。