作家仲間の新刊のご紹介

明日ハ晴レカナ曇リカナ
『明日ハ晴レカナ曇リカナ』著・風野潮
親子・夫婦・兄弟、そして他人だけど肉親以上に近いあの人―。秘められた思いが切ない、二つの家族の再生の物語。(帯より)
『小さな空』の続編。作者の家族を彷彿とするような温かい家族の風景に、人気バンドのミュージシャンである十和田正見と血のつながらない娘風希子の物語が重なります。二つの家族の再生の物語と読めるのですが、物語の主軸となるのは、サラリーマンの岩本潤三と漫画家である光江の夫妻、その息子太一と慎二。そして、十和田正見と風希子の家族です。この二つの家族は、まるで、運命の赤い糸に結ばれているようです。
風希子は、父としてだけではなく正見を愛してしまって、リストカットを繰り返す苦しみの中にいます。そして、その風希子からは、正見がひそかに光江を愛しているように見え、光江もまた正見を愛しているように見えます。けれども、この二人はかけがえのない友人であるという地平を、どこまでも大切にするのです。それが不自然ではないのが、風野さんの描きだす世界なのです。登場人物の親たち、もはや中年の域に足を踏み入れてしまっているはずの潤三も、光江も、正見も、みな繊細で優しく、それゆえに傷つきやすい存在なのです。ですから、全編、まさに青春小説を読んでいるような錯覚を覚えます。いえ、青春まっただ中の太一、慎二、風希子は、むろん青春そのものなのですけれど。もう充分に、人生にすすけてしまっていいはずの年代の大人たちの姿にこそ、彼ら以上の青春を感じるのです。その爽やかさが、吹き抜ける風のように全編を貫いています。ああ、これこそが、風野潮さんの世界なのです。

タイムマシンクラブ〈1〉ブラックホール事件 タイムマシンクラブ〈2〉過去からの手紙 タイムマシンクラブ〈3〉ハロー、こちら二十一世紀
『タイムマシンクラブ』1〜3 著・天沼春樹/香西美保
パシッ! シュートしたサッカーボールが空中で消えた。そればかりじゃない、町じゅうからいろんなものが消えていく。
 主人公、アマカタ タケルを中心に、熱血「タイムマシンクラブ」がナゾ解きにチャレンジだ!
(内容紹介より)
幻想小説界の黒王子ともいえる天沼春樹さんの、これはまた、びっくりの低中学年向き謎解きシリーズ。香西美保さんとの共著というのも、またびっくりでした。
でも、お二人の相性は絶妙なのか、どれが王子か、姫か、わからないような仕上がりになってます。
ダジャレ、ギャグ、タカトシみたいなボケツッコミも乱れ咲き、SF的謎解きなどは、春樹王子にとってはお手のものですから、読む方も安心してリラックスして楽しめます。
香西さんも不思議話はお得意分野ですから、きっと、図書館で、子どもたちが回し読みするんじゃないかなあ。
タイトル文字に時計がデザインされてるのが面白いのですが、できれば、1巻は1時、2巻は2時、3巻は3時とかに変えても楽しかったんじゃないかなって思いました。