『遠野物語と怪談の時代』

遠野物語と怪談の時代 (角川選書) 遠野物語と怪談の時代 (角川選書)
遠野物語』は怪談への熱狂から生まれた―。明治後期、文明開化以来の合理主義と功利万能主義に抗うように噴出した怪談ブームと、柳田國男泉鏡花らが熱狂した「怪談会」。その知られざる実態を、豊富な史実と文献でひもとき、名著誕生の経緯を怪談史の視点から探究。怪談実話としての真髄を明らかにし、芥川龍之介らを経て現代に至る怪談文芸の系譜を展望する。史上初復刊!「日本妖怪実譚」も収録。(内容説明「BOOK」データベースより)


怪談専門誌『幽』の編集長であり、怪奇幻想文学の編纂、評論のスペシャリスト東雅夫さんの新刊です。
刊行100周年を迎えた日本民俗学の名著『遠野物語』(著/柳田國男)は、文学を生業とする者なら、一度は手にし熟読したはずです。
その『遠野物語』が生まれた明治後期の世相と文学界の潮流、その息吹が、ぞくぞくするような筆致で解き明かされます。
膨大な史実文献が駆使され、鮮やかに浮かび上がる時代の熱気、作家たちの姿。
そうかそうか、そうだったのかと、『遠野物語』を読んでからずっと何やら喉につかえていたものがスーッととけていくようなこの快感。
嬉しくて、もう一度、『遠野物語』読み直したくなるかもしれません。
この国の怪談史は、推理小説のようにスリリングで面白かったです。(written by 越水利江子