宮部みゆきさん、大好き ♥

私は昔から、宮部みゆきさんの大ファンです。でも先日、青い鳥30周年記念講演の懇親会でお目にかかって、ますます大好きになりました。ご本だけでなく、宮部さんのお人柄の素敵さにも、もう、ぞっこんです。やはり、文章や作品というのは、その人をあらわしているのだなあと、しみじみ思ったことでした。
今日は、その宮部さんの傑作『孤宿の人』上下をご紹介します。

   孤宿の人(上) (新潮文庫)         孤宿の人(下) (新潮文庫)
時代ミステリーなのですが、少女の頃にほとんどの小説を読破した山本周五郎さんのお作品を思い出しました。人の業の深さ、弱さ、それゆえの哀しみ、痛み、それでも、とめどなく溢れ出してくる愛に満ちた物語……それは、あの時代、山本周五郎さんの独壇場でした。
でも、現代作家では、やはり宮部さんだったのだ!と胸打たれました。
宮部さんと同時代に生きていることの喜び、天上の月と、月影の水面から顔を出した亀の子ほどの違いはあれど、同業の作家として、宮部さんのご本に出会えることに感謝したい気持ちです。
この本が大好きなので、表紙も大きめに載せてみました。文庫ですが、絵がとても素敵なので観ていただきたくて。上下の字にデザインされた兎が可愛いでしょう? これは本文の登場人物とリンクしているのです。
手をつないだ若い娘が宇佐(うさ、うさぎとも呼ばれている)、小さな女の子がほうです。それを書いただけで、私は涙が出そうになります。
北は瀬戸内に面した丸海藩、讃岐の国に、捨てられた九歳のほうは、藩医の井上家に保護されます。一度も人に愛されたことないほうを、優しく包んでくれた讃岐の国の自然、井上家の人々。老先生、若先生、そして、若先生の妹の琴江さま。
ほうが初めて手に入れた幸せの日々は、琴江さまが毒殺されたことから、がらがらと崩れ始めます。丸海藩では、不審な毒死、謎が謎を呼ぶまがまがしい事件が連続していきます。
仕立てはミステリーですが、人物像の深さに、まず引き込まれます。相次ぐ凶事、謀略、殺人……さらに将軍家から、丸海藩お預けとなった悪霊と怖れられる加賀様……。
群像を描きながら、作者から切り捨てられる人物は一人もいません。小さな脇役に至るまで、作者に魂を吹き込まれていたのだと、読み終えた時、胸深くに、人と人の切ない愛がしみとおるようでした。
この本に出会えて幸せだと思える愛おしい物語です。人としても、書き手としても、ありがとうをいいたいです。(written by 越水利江子