月の上のガラスの町

月の上のガラスの町 (シリーズ本のチカラ)

月の上のガラスの町 (シリーズ本のチカラ)

今から遠い未来、人類が月に暮らすようになった時代、月の上には、透き通る巨大なドームにおおわれたガラスの町がありました。そこには友達のようなロボットがいたり、工場や農園があったり、背の高い草が生えていたりします。さえざえと冴えわたる月光のような6話の物語。小学校高学年から。 (内容紹介より)
児童文学界にとっても、私にとっても、大先達である古田足日先生の新作です。
古田先生のご本といえば、時代を超える名作『おしいれのぼうけん』を思い出される方も多いのではないでしょうか。私の子どもたちも『おしいれのぼうけん』を何度も何度も読んで育ちました。今も変わらず、子どもたちに愛されている絵本です。
その古田先生の『月の上のガラスの町』は、6つのお話が入っている月の未来ファンタジーとでもいうべき物語です。下記が目次。
・西からのぼる太陽
・あくまのしっぱい
・アンドロイド・アキコ
・十二さいではいれる大学
・月の花売り娘
・巨大な妖精
このうち、アンドロイド・アキコは、かつて1967年、1978年の二度単行本として出版されているそうです。古田先生はそのたびに、物語をさらに練り直し出版されています。プロ中のプロである大先達の、作品に対する愛に胸打たれました。
SFとはいえ、奇抜な仕掛けに頼るのではなく、一つ一つの物語は子どもごころにそって展開します。月世界旅行あり、愛を求めるアンドロイドあり、月に巣くって人間の魂を買い取る悪魔あり……と、どれも人間ドラマそのものといっていい優しさと深さで語られていきます。
一話一話が愛しいと感じられる未来の月の物語です。