明の太祖の半生『朱元璋 皇帝の貌』

 朱元璋 皇帝の貌
十四世紀半ば、黄河の度重なる氾濫で元は衰退し、紅巾軍が各地で叛乱を起こす。孤児であった朱元璋は、幼馴染みの誘いで、紅巾軍の将・郭子興の配下となった。頭角を現し、郭子興の養女を妻とした朱元璋は、徐々に力を蓄えていく…。孤児から皇帝へ。明の太祖の波乱の半生を、気鋭の作家が、ダイナミックに描く。
我ら、弱き者、貧しき者を救うために戦う!

(内容紹介より)

ツイッターでお出会いした小前亮さんの新刊を買って読ませて頂きました〜
中国戦国史には詳しくないので、ごく初心者の感想でしかないのですが、著者の重厚で簡潔な文体にまず惹かれました。
舞台は、遊牧民族モンゴルが支配する元の時代末期。
流民の子、朱元璋が、弱き者、貧しき者のために立ち上がり、志を同じくする仲間と共に戦乱を戦い抜く英雄伝ですが、時代、人物の描き方には余計な飾りがなく、剣でいえば直刃のように鋭く明快です。なのに、行間から飄々とした可笑しみがこぼれるのはなぜでしょう。
おそらく、登場する人物の魅力、個性が際立っているからだと思えます。
まさに、剛直骨太の男の小説でした。


主人公の朱元璋は、後の洪武帝(こうぶてい)。史実によると、晩年には、凄まじいばかりの粛清を行ったといいます。
処刑、あるいは何者かに毒殺された功臣たちの中には、この小説に登場する英雄たちの名もあります。
この小説を読了した今は、その史実が辛いものに思えます。
でも、『朱元璋 皇帝の貌』は、若き日の朱元璋が皇帝にのぼりつめるまでの物語ですから、爽快に読むことができます。
魅力的な戦士は多いのですが、花雲の壮絶な戦士ぶり(女戦士なのです)に、胸打たれました。
甘い物語ではありませんが、史実派の読者にこそ愉しめる一冊だと思います。