岩崎京子さんと、しんやひろゆきさんの新刊

大どろぼう疾風組参上!―ばけもの長屋のおはなちゃん大どろぼう疾風組参上!ーばけもの長屋のお花ちゃん』著/岩崎京子
ここは、花のお江戸のとある長屋。近ごろ長屋のみんなの噂は、大どろぼう疾風組のこと。貧乏人に小判をくばる正義の味方だと大もて。でも、本当の正体は? 貧乏神におはなちゃん…それに粋な女神と化け物たち…いつもの面子があつまっての、笑いと涙の人情話第2弾。(商品説明より)
お馴染み、岩崎京子さんのお花ちゃんシリーズです。まずは、意気のいい簡潔な文章を堪能して下さい。もうそれだけで、お宝なのですが、物語がまた楽しいのです。
岩崎先生は昨年米寿を迎えられたとお聞きしています。でも、お作品の若々しさは、岩崎京子さんという作家の若さを見事に映し出しているように思いました。児童書において、こんな活き活きした江戸っ子が登場する本にはめったにお目にかかれません。一度、声に出して読んでみて下さい。心地よくって、癖になります。
江戸時代の空気感、当時の庶民の暮らし、そして、江戸の闇に跳梁した大泥棒、妖怪、神様までが、長屋の人々と同じ体温、人情をもって描かれます。
私も歴史ファンタジーを書くため、この時代の資料を読み込んでいるので、それらが絵空事でないのを感じています。そうなのです。江戸の町は、人間だけでなく、化け物、神様までも、血や涙が通っていて、とっても人間らしかったのです。この本に限らず、岩崎児童文学は読まなきゃ損。ことに子供と、作家志望の方は必読です。
シャッフルシャッフル』著/しんやひろゆき
ある日突然、ぼくはおじいちゃんに。おじいちゃんはぼくに、秀和はお母さんに。お母さんはお父さんに、お父さんはアネキに。アネキは秀和に入れ替っちゃったんだ!家族のハチャメチャな大騒動はこうしてはじまった。 (商品説明より)
魂が入れ替わる話は数あれど、『シャッフル』は、なんと、ペットを含めた一家全員の魂が入れ替わってしまう物語です。
いやはや、この設定だけで、私なら書くことを放棄してしまいそうです。だって、そんなとんでもない話をどう書いたらいいんですか!?
とまあ、不安と期待で読み始めましたが、読み始めてまたびっくり。
だって、主人公のぼくがおじいちゃんになってしまうばかりか、思春期の姉の身体には、中年のお父さんの魂が入ってしまい(女子高生が読んだら悲鳴をあげそう…)、姉の魂はというと気弱な弟の身体に。赤ちゃんはペットの猫と入れ替わり、お母さんはお父さんの身体に、お母さんの身体には気弱な弟の魂が……という、まさにシャッフル!
もう大混乱かと思えば、最初のシャッフル状態さえ理解すれば、あとはすらすら読めるこの不思議。
おじいちゃんと孫の話なら、この世にごまんとあるけれど、おじいちゃんの身体に宿ってしまった十三歳はどうなるのか……これは読んでもお楽しみ。
一言だけいわせてもらうと、爽快で、それでいて、ほろりとする物語です。