強く優しい昭和の男子の物語

地をはう風のように (福音館創作童話シリーズ)

地をはう風のように (福音館創作童話シリーズ)

舞台は戦後の栃木県今市。小学校6年生になった春、コウゾウは地面を吹き上げてくる荒々しい風のようすに、自分を重ねていた。貧しい家、出稼ぎで家にいない母、1年生の弟、疫病神のような祖母、近所とのしがらみ、つまらない学校生活・・・。コウゾウの置かれた環境は、どん底といってもいいくらいだ。そんななかで、いつも何かにいらだち、ささくれ立っていたコウゾウの気持ちは、まわりの大人とのふれあいや、転入生の女の子の温かい思いやりによって、だんだんとほぐされていく。貧しいなかでも力いっぱい生きようとするたくました、そして素直さを失わないコウゾウだからこそ感じられる喜びや幸福感。成長していく少年の姿に、ひらけた明るさが感じられるものがたり。
内容(「BOOK」データベースより)

『父ちゃん』で、児童文学者協会賞を受賞された季節風同人、高橋秀雄さんの新刊です。
何もかも吹き飛ばしていくような荒々しい風の中に立つコウゾウの姿は、男子の中の男子そのもの。
子供であっても甘さのないどん底の生活にあって、それでも、風に吹きさらされた魂の清らかさ、強さ、我慢強さ、優しさに、いつしか心が洗われます。
あの時代しかいなかった少年かもしれない……だからこそ見える、人の優しさ。
人と人が出会い、共に生きていくことの本当の幸せは何なのか、この物語はじっくり語ってくれます。
小学上級以上から読める本ですが、大人が読んでも充分満足できる一冊です。