原子力発電所が爆発した。180キロはなれた村では…

すでに読み終えてご紹介したい本は数冊あるのですが、まずは2004年に発行されたこの一冊をご紹介します。
課題図書というものがあって、よかったなと、心から思った本です。
アレクセイと泉のはなし
その日、チェルノブイリ原子力発電所が、爆発事故を起こしたのだ。ぼくの村は一八〇キロ離れていたけれど、見えない放射能で汚され、もうここに住んではいけない、と言われた。たくさんのひとが村を離れた。でも、五五人の年寄りとぼくは村に残った。父さんと母さんは、村を出るなんて思ってもいない。ぼくもこの村が大好きだから、三人で今までと同じように暮らしている。チェルノブイリ原子力発電所事故の被災地ベラルーシで、今も暮らす人々を撮影した映画『アレクセイと泉』の写真絵本。( BOOKデータより)

アレクセイは本当に素敵な青年。神さまが創造された汚れのない人間というのがこの世にあるなら、アレクセイじゃないかと思うぐらいに。
「十数年前に、チェルノブイリの悲劇が起こりました。それはまだつづいています。けれども、ここには、聖なる泉があります。この泉の水を、喜びとともに飲んでください。そうすれば、希望が満ちてきます。この泉の水が困難な場所に住んでいるあなたがたに、力を与えますように。この、悲しみの大地を、希望の大地にしていつまでも暮らせますように」
本文の言葉です。

そうなのです。この写真絵本が発行された原発事故十数年後にも、この村の放射能は消えませんでした。
村人が集まるパーティの広場も、ジャガイモ畑も、昔子どもたちが駆けまわった学校の跡地も、村人が薪をあつめる森も、すべて、2004年のこの時も、現在も汚染されています。
でも、百年もかかって地上にあふれてきた泉の水だけは、清浄なのです。村人の命の水。
この泉があるから、アレクセイと村人は暮らしていけるのです。
この本の最後に、アレクセイがいいます。
「村の人々は、まだまだ元気。けれども、何十年か過ぎたあと、ここに住んでいるのは、ぼくだけになっているかもしれない」……と。
アレクセイは、今はどうしているでしょうか? 元気でしょうか?
元気でいてほしいと、心から願います。
しずかな悲しみ、痛みとともに、人の暮らしの美しさ、無垢な年寄りたちの愛の深さ、たくましさが、胸に迫ってきいます。
絵本新刊は、今では買えません(アリス館さん、この機会に復刊してほしいです)が、ぜひ図書館でご覧ください。

大人向きには、こんな本も。

アレクセイと泉

アレクセイと泉

映画もあります。
アレクセイと泉 [DVD]

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