魔法と冒険、そして、友情の物語『クロックワークスリー』著/マシュー・カービー 訳/石崎洋司

クロックワークスリー マコーリー公園の秘密と三つの宝物
舞台は、1900年代のアメリカ。
不思議な音色を奏でる緑のバイオリン、機械仕掛けで動くふしぎなものたち、そして、隠された財宝……。さあ、三人の子どもたちの大冒険がはじまります。500頁を越える物語ですが、読み始めたら最後まで一気に読んでしまうことまちがいなし!日本の子どもに、そして、子どもだった大人に読んでもらいたい、愛と友情と勇気、そして「物語」の魅力がたっぷりつまった1冊です。
amazon内容紹介より)


分厚い本です。でも、読み始めたら一気に読んでしまえます。
というのも、いわば、アメリカの時代ファンタジー(1900年代)なのに、映画を観るようにその景色が見え、その町や海の匂いまで香ってくるリアルな描写に引き込まれるからです。
ファンタジーであればあるほど、主人公が生きる世界は人間の匂いが立ち上がってこなければならない。それらがリアルだからこそ、ファンタジーの醍醐味を味わえ尽くせるのだと、よく講座などでは話してきたのですが、まさに、この物語はそのお手本になるのかもしれません。
そして、読者は、この物語の三人の主人公、バイオリン弾きの少年ジュゼッペ、時計職人の徒弟フレデリック、ホテルのメイドである少女ハンナという三人の子どもたちと共に、ドキドキわくわくして、読み進めることができます。
ただ、注意しておきたいのは、物語のなかで、彼らが孤独と恐怖におびえ、悲しみと痛みに耐え、喜びや希望を見つけ、やがて勇気を得て立ち上がるのを、読者はただ見物するのではなく、共に体験することになるということです。
そういう物語に出会える幸せを感じた一冊でした。
大人も子どもも楽しめます。どうぞ、親子で読んで下さい。
この物語に登場する子どもたちは、三人とも本当に素敵です。でも、その子どもたちを見守る魅力的な大人たちにも、私は心から魅了されました。
この作品がデビュー作だというマシュー・カービーさんとは、いったいどんな作家さんなんでしょう、この先、どんな物語を書いて下さるのでしょう。
訳者の石崎洋司さんに、こんどお目にかかったら、ぜひ、きいてみたいです。