長渕剛さんの新アルバム【Stay Alive】「カモメ」に泣きました


あの3月11日、長渕さんが、こんな時に歌なんか歌って何になるのか…と思われたと知って、私は、ああ、みんなそうだったのだ……と思いました。
あの日から、作家の多くも同じ思いに打ちひしがれて書けない人が沢山いらっしゃいました。私もその一人で、去年の年収は半減しました。




なのに、この国の政治はまだ原発を続け、再稼動しようとしています。何の安全保障もないのに。
福島の人々の痛みを、東北の悲しみをまた繰り返すというのか……そう思えば、湧き上がる悲しみと怒りがさらにまた、自分を追い込んでしまう悪循環。
それでも、長渕さんは被災地へ、ギター抱えて赴かれました。
被災地のみんなは、待っていてくれました。長渕さんの歌を待っていてくれたのです。
その時のビデオともいうべき、去年のNHK紅白のDVDがプレゼントについていました。
私は去年の紅白は観ていなかったので、とても感動しました。

今年、私が、東北芸術工科大学客員教授をお引き受けするという思いもよらぬ選択をしてしまったのは、長渕さんと同じ思いからです。
小説なんか、物語なんか、何の役に立つんだ、書く意味があるのか…と、書けなくなったあの時。
津波だけでなく、もっとも悲惨な原発事故の被災まで重なってしまった東北のために、何かしたいという強い思いがありました。
一人ひとりのできることなどしれています。
でも、一人ひとりの思いは、人を動かし、この国を動かしていくのだと信じて決めたことでした。

アルバムの中では、最も、あの被災地の風景が重なって、涙を禁じ得なかったのが「カモメ」でした。
「カモメ」は、原発被害を受けた浪江の町が舞台です。






僕が歩いてきた道は 正しかったのか!
したたり落ちてく命の
最後の最後の一滴を
コメカミにつきつけてみた
今一度問いかけてみた
僕たちが歩いてきた道は 本当に正しかったのか!
    (「カモメ」より)

その叫びは、これまで、私達の胸に、何度もこだました「問い」でもありました。
私はチェルノブイリ事故直後から25,6年、原発は危険だからやめようといい続けてきた人間の一人です。
でも、それは免罪符ではないのです。結局、止めることもできず、みんなに危険を知ってもらうこともできず、今の状態をむかえてしまったまま、のほほんと生きてきたのですから。
私もまた、問いかけるしかなかった……お前の歩いてきた道は、ほんとに正しかったのかと。
そして、日本中の多くの良心、澄んだ魂は答えを得たのだと思います。
自分は間違っていた、だからこそ、新しくやり直そうと。

止めてくれ 
原発
止めてくれ
今すぐ
    (「カモメ」より)

その声は、日本の良心の声です。お金より何より、子供達の未来こそを護ろうとする庶民の声にほかならないのです。
長渕さんの歌は、日本へ、日本人への愛に溢れています。
ぜひ、みなさまも聴いてみて下さい。