『忍剣花百姫伝』とほほ外伝・夢さん旅日記3
◆「夢さん旅日記3 花は花でも…」
初めての方は、↑カテゴリーの[夢さん旅日記]をクリック!「夢さん旅日記1この世の花」からご覧ください。いや、むしろ『忍剣花百姫伝』を読んだ人が最も楽しめます。
今回から、スカイエマさんのキャラクターを使ってみますね!
夢候(ゆめそうろう) 「花茶屋でのんびりするのも、退屈してきたな。なあ、天魚(あまご)、遊びに行かねえか?」
天魚(あまご) 「いや、遠慮します。夢さん、また遊郭へ行くんでしょう? そういうの、美女郎(みめろう)がいやがるから……。」
夢 「なんだ、あいつ、花を採集に山へ出かけたんじゃないのか?」
天魚 「ええ。でも、今日ぐらいには、白い花を沢山採って帰ってくるはずなんです」
夢 「白い花茶を作るのか……ありゃあ、元気が出るからな。じゃ、ちょいと飲んでから、一人で行くかな」
天魚 「白い花茶なら、さっき、醜草(しこくさ)が入れてましたよ」
夢 「そうか、そりゃあ、いいや。おい、醜草。白い花茶を一杯くれよ」
(夢候は呼んだが、奥からの返事はない。)
夢 「おーい、醜草〜! いないのか?」
(奥へ行くと、醜草が、さっと、何かを隠した。)
醜草 「あー、えーっと、白い花茶は切れました」
(だが、あたりには白い花茶のいい匂いが……)
夢 「おいおい、醜草。なんだよ、なんで、嘘をいうんだよ」
醜草 「いえ、そんな……嘘なんかいってません……しどろもどろ」
夢 「醜草、おまえは嘘がつけない奴だな。また、美女郎におどされたのか?」
醜草 「いや、そういうわけでは……あっ」
(と、夢候が醜草の隠した花茶を見つけた。)
夢 「これこれ、いい香りだ。ああ、癒されるなあ」
(お茶を飲み干す夢候)
醜草 「そ、そ、それは、だめです!」(青ざめる醜草)
夢 「まあ、ケチなこというなよ。醜草にも、何か土産を持って帰ってやるよ。可愛い女たちが待ってるんだ。可愛い夕月太夫〜 愛しい小桜太夫〜 待ってろよぉ」
(いいつつ、夢候はバタリと倒れてしまった。見ると、すやすや眠っている。)
醜草 「ああ〜 だからいったのに。これは、眠り花茶なんだ。美女郎さんに秘密だっていわれたのに……どうしよう〜」
夜も更けて、ドサッという音。
見ると、籠一杯に白い花を摘んできた美女郎である。
天魚 「おかえり、美女郎。あれ、夢さん、どうしたんだ? 遊郭へ行ったんじゃないのか?」
(天魚は、眠っている夢候を見て、びっくり。)
美女郎 「さては……醜草! こいつに飲ましたのか!?」
醜草 「は、はい。すみません〜 眠り花茶のことは秘密だといわれたのに、飲まれちゃって……」
美女郎 「ふーん。こいつがぐっすり眠っているってことは、人体実験成功だな」
(いいつつ、夢候をけとばす美女郎)
夢 「いてっ。痛えなあ〜 夕月。長いこと会えなかったからって、そんな怒ることないじゃないか〜」
(半分寝ぼけたまま、美女郎を抱きしめる夢候)
美女郎 「どあほっ!!」(投げ飛ばす)
夢 「いててて……夕月ちゃんてば、乱暴だなあ」と、また抱こうとする。
美女郎 「なんだ、こいつ。まさか、幻覚が見えているのか?」
天魚 「白い花茶に、何を入れたんだ?」
美女郎 「眠り茸だ。毒消しに青い花も混ぜたが……」
天魚 「そりゃあ、だめかも……」
夢 「な〜にいってるんだ、夕月ぃ。今夜はずっと一緒だぜ。おめえ、なんて綺麗になったんだ。恋をすると、女は綺麗になるそうだが、俺に惚れたのか? いいんだ、いいんだ、俺もおめえに惚れてるからな……」
(美女郎相手にめろめろの、寝ぼけ夢候)
美女郎 「醜草、このあほをなんとかしろ」
醜草 「夢さん! 目を覚まして下さいっ。夢さんっ」
夢 「おお、おめえは、小桜太夫か? わ、どうしたんだ、頭がつるつる……かわいそうに、尼になったのか。なんでだ、俺が可愛がってやるのに……」
醜草 「だ、だめです! わたしが太夫に見えるなんて〜 重症です〜」
美女郎 「こうなったら、こうするしかない」
(美女郎はふところから竜笛を出して、ヒューと吹き鳴らした。とたんに、夢候が消えた)
天魚 「おい、美女郎。どこへ飛ばしたんだ?」
美女郎 「ふん。あいつの大好きな所にでもいるんだろうよ」
美女郎の言葉通り、夢候は遊郭にいた。
夕月太夫と小桜太夫を両手に花。
空には満月、誰が吹くやら風情のある笛の音が響いている。
ホウ、ホウと、鳴く鳥も……
夢 「ああ、幸せだなあ。それにしても、夕月、おめえ、毛深くなったんじゃねえのか?」
はてさて、夢候の運命やいかに……
※この連載は『忍剣花百姫伝』シリーズの外伝ですが、本編とは関係ありません。