『リンカーン アメリカを変えた大統領』の世界

リンカーンにゲイ疑惑があると聞いていましたが、資料を読み込んで思ったことは、そう考えてみたくなるようなドラマティックな出逢いだったのだなということでした。
青年時代、リンカーンはジョシュア・スピードという五歳年下の青年に出会います。
その青年は、はっとするほど美しく、しかも、リンカーンの亡き恋人と同じ青い瞳の青年でした。このジョシュアとリンカーンは四年間、同じ部屋で、ダブルベッドをシェアして同居するのです。
今ではありえないことでも、この時代は、男性同士がベッドをシェアするというのは、他でもあったことのようです。
ジョシュアとの同居が四年間続いて、リンカーンの結婚が決まったころ、ジョシュアは故郷へ帰ってしまいます。
けれども、結婚するかどうかを深く悩んだリンカーンは婚約を破棄して、ジョシュアのもとを訪ねるのです……。

とまあ、これは本当にあったことです。
二人はその後、互いの結婚について、励まし合うかたちでそれぞれの女性と結婚します。
リンカーンとジョシュアの友情は、死が二人を分かつまで続き、リンカーンの死後も続いていたといえるでしょう。
もう、これは愛であり、そういう意味でいえば、二人は人として、深く愛し合っていたといえるでしょう。
でも、それは精神的な意味です。
どんな関係もその精神的な部分に宿る愛のありようで、人の心を打つのです。
ジョシュアとリンカーンの関係は、心を打ちます。
さらに、大統領となったリンカーンと、その周囲の人々との関係も深く心を打たれます。
リンカーンという人は、愛の人だと感じました。私は、そのリンカーンの愛を中心に書きました。