『マジックアウト』著/佐藤まどか 絵/丹地陽子

マジックアウト〈1〉アニアの方法

マジックアウト〈1〉アニアの方法

未曾有の危機に瀕し、絶望におちいった国。救うのは、天賦の「才」か、積み上げた「知」か? すべてを失ったそのとき、新しい何かがはじまった。真の天命とは何か? エテルリア国存亡の危機を救うため、定められた道を変えていく少女の永きたたかいが、今、幕を開ける。本格長編ファンタジー(内容紹介より)
海に囲まれた美しい小国エテルリアは光り輝く黄金の島。
そして、この国の人々の多くは、魔法ともいえる「才」に恵まれているのです。
エテルリアは才術の国。すべての才が結集され、病気も災害もコントロールされ、ゆたかな環境も文化も才術によって思いのままの国。
しかし、ある日、すべての才術の効力が消え失せ、エテルリアは太陽の光も射さない深い霧と強風の国になってしまいます。電気も食料もなく、暴力と暗黒に陥ったエテルリアで目覚めたのは、才の国に生まれながら、すべての才にめぐまれず、無才人と呼ばれ差別されてきた少女アニアでした。
才によってコントロールされていたすべてがコントロールできなくなり、「電気をつくるためには、これからは風力発電を」と、呼びかけるアニアに立ち塞がるのは、一からやり直すなんて無理だという人々、そのうちまた才術が使える日が来るんじゃないかと展望のない希望にすがる人々でした。
それはまさに、3.11後の日本の姿を見るようでした。
すべてを失った今、どのように新しく始めるか…その問いは、現代の日本人に強く迫ってきます。
なにより、魔法の国の落ちこぼれ魔女が、やがて凄い魔女になるといった設定ではなく、まったくその能力のない無才の少女を主人公として、無才であることの意味を問いつつ、その力の大きさを描いていくこの物語は、本当の意味で、人への愛と優しさに満ちた物語だと思いました。

マジックアウト〈2〉もうひとつの顔 『マジックアウト2 もうひとつの顔』に続きます。