『夏っ飛び!』横山充男(文研じゅべにーる)

 『夏っ飛び!』
「親父も飛んだ、兄貴も飛んだ、おれも、六年生のときに飛んだ。だから、おまえも飛ぶ。な、そういうことだ。」父さんはそう言って、どうしてもおれを神柱祭に出そうとする。十メートルの高さから飛びこむなんて、じょうだんじゃない。まして、ふんどしになるなんて!
でも、ある日、転校生の友也も神柱祭に出ると言いだして……。
(カバー紹介より)

少年と海と夏といえば、横山充男さん。
これまで、このテーマで二度も課題図書となっている作家さんなので、紡ぎだされる少年の世界は、まるで、目に浮かぶようです。
夏の青空、入道雲、海のきらめき、飛びこむ水音や、少年の動悸の音まで聞こえてきそうな物語です。
十二歳の少年が、昔でいうなら元服、大人になる儀式とでもいいましょうか、がけの上に突き出された神柱から、はるか十メートル下の青い海へジャンプするその瞬間の映像が、読後、映画を観たように脳裏に焼き付きます。
ここまで鮮やかに、少年の夏のきらめきを切り取る作家さんは、めったにいません。