『光車よ、まわれ!』

(P[あ]2-1)光車よ、まわれ! (ポプラ文庫ピュアフル)

(P[あ]2-1)光車よ、まわれ! (ポプラ文庫ピュアフル)

はじまりは、ある雨の朝。登校した一郎は、周囲の様子がいつもと違うことに気づく。奇怪な事件が続出する中、神秘的な美少女・龍子らとともに、不思議な力を宿すという≪光車≫を探すことになるのだが----。≪光車≫とは何か。一郎たちは「敵」に打ち勝つことができるのか。魂を強烈に揺さぶる不朽の名作が、待望の文庫版で登場。【解説/三浦しをん

作者の天沢 退二郎(あまざわ たいじろう)氏は、東京大学文学部仏文科を卒業された日本の詩人、仏文学者、児童文学作家、翻訳家であり、宮沢賢治研究者で、明治学院大学文学部仏文学科名誉教授という大先生です。
そんなすごい人が書いた児童文学だから、もしかして、理屈っぽいのかなと思いながら手に取りました。
ところが、理屈っぽい?なんて、とんでもない。子どもたちが大活躍するファンタジーというより、目をみはるぐらいシュールなお話でした。
読み終えたあとも、あれって、本当は何だっただろう……って、考えないではいられません。
タイトルともなっている光車は、究極、何だったんだろう……って。
子どもの本らしく、すべてを明らかにしてほしい、物語ですべてを語り尽くしてほしいと思う人には、向かないお話かもしれません。
ともかく、読み終えたあと、誰もが宿題を出されたように、真剣に物語世界のことを考えずにはいられません。
いつの間にか迷路に迷い込んだような、とってもシュールなお話なんです。
謎が謎を呼んで、地霊文字とはなにか? その謎の文字を受け継いできた龍子のおじいちゃんとは何者なのか、水面の裏側の者たち、水魔人とその王国とは何なのか、子どもたちを妨害する緑の制服の者たちは何をあらわしているのか……人間の半分である悪の化身とは……?
ここまでくると、シュールなだけではなく、哲学的で、やや難解といっていいのかもしれません。
それでも、子どもたちは一気に読んでしまうことでしょう。何より、子どもたちがいきいきとして、大人顔負けの活躍をするところが、子どもたちにとっては最高なのかもしれません。
スカイエマさんの描く子どもたちも、やや謎めいていて、この物語の世界観をじわっと感じさせます。
シュールを楽しみたい人におすすめします〜