『天からおりてきた河 インドガンジス神話』文/寮美千子・絵/山田博之 『エルトゥールル号の遭難』文/寮美千子・絵/磯良一


寮美千子さんの絵本が二冊、どちらもおもしろそうなので買ってみました。
でも、エルトゥールル号の方は、絵本というより、歴史をもとにした絵童話という感じでした。
絵本、絵童話といっても、充分に大人が堪能できる内容です。 


1985年3月、イラン・イラク戦争の開戦直前、在イランの日本人200名以上は脱出方法が見つからずに生命の危機に瀕していました。その時、トルコ政府は2機のトルコ航空機をテヘランへ派遣して、215人の在留邦人を救出してくれました。感謝の言葉を述べる日本人に対し、トルコ政府は「私たちは100年前の日本人の恩を忘れていません」と答えました。その恩とは、本書が描く「エルトゥールル号の遭難」です。1889年、エルトゥールル号はトルコ皇帝の命を受け、日本に派遣されましたが、任務を終えて帰国の途上、大嵐にのまれ、紀伊半島の大島沖で沈没してしまいました。このとき大島の漁師たちは大嵐の中を懸命に救助して、500人中69人を助け、その生存者は、日本の軍艦でトルコへと送り届けられたのです。本書は、「日本とトルコを結ぶ心の物語」として、「エルトゥールル号の遭難」を描いた本です。子どもたちが分かりやすいように、本文は児童文学者の寮美千子先生、イラストは世界に知られるスクラッチイラストの第一人者の磯良一さんが担当しました。 (「BOOK」データベースより)

古き良き日本人の美しさ優しさが際立つ歴史的事件の物語です。
この本を読んで、私はふと、あの3.11大震災の時の東北の人々の姿を思い出しました。あのような時でも、人と争わず、礼節をわきまえ、なにより、世界が目をみはるほど、誇り高く強く、他人に優しく親切だったあの日の日本人の姿を思い出したのです。
エルトゥールル号の遭難事件があったのは明治23年
かつて、欧米の人々から「微笑の国」「妖精の国」と呼ばれた江戸末期や明治初めごろの無垢で親切な人々や、その心豊かな地域文化が、まだ色濃く残っていた時代のことでした。
国と国といった構えた話ではなく、一人の人間と人間、半漁半農の貧しい島の住人たちと、遠い異国から来た船員たちの一期一会の出逢いと別れは、胸に迫って、とても感動的でした。
村人と船員たちが心と心で結んだ友情の絆は、不幸な世界大戦を乗り越えた今も続いているのです。
人と人の深い愛と、時代を超えた友情の物語です。

天からおりてきた河―インド・ガンジス神話

天からおりてきた河―インド・ガンジス神話

ヒョウタンから生まれた6万人の王子は、聖者の怒りに触れ、一瞬のうちに灰に。その魂の供養には、天上界を流れるガンジスの聖なる水が必要だ。ガンジスを地上に招くための壮大な旅がはじまる。それは神々をも巻きこんで…。インドの人々が、いまも信仰する神々の物語。(「BOOK」データベースより)
こちらは、インドの聖なる河、ガンジスの神話です。
わかったようでわからなかったインド仏教のガンジス河への信仰の本当の姿が、ようやく見えてきたような気がして、敬虔な気持ちになりました。