『ジャンピンライブ‼! オンザストリート』作/開隆人

季節風の同人、開 隆人さんの新刊です。かつて、季節風大会の「愛の物語分科会」で合評された作品が本になりました〜
おめでとうございます〜

ジャンピンライブ!!!―オンザストリート (ホップステップキッズ!)

ジャンピンライブ!!!―オンザストリート (ホップステップキッズ!)

両親の離婚によって父子家庭の子になった主人公レイは、生活能力はないが、懸命に立ち直ろうとする父親との生活を守るため、日々の生活費を稼ごうとする。そんな時に出会ったのが、流しのギター弾き、ケンさんだった。離婚前、幸せだった頃のレイの父はミュージシャンであり、そのギターが今も部屋に残っている。ギターを弾くことが好きなレイは、街角で演奏することを思いつくが……

音楽が聞こえてくる……というのは単純すぎるかもしれません、むしろ、さまざまな響きを感じる物語です。
一見、中学生に見えるレイは、実のところ小学六年生、小学生が働いて生活費を稼ぐことができるのか?という難問を、レイは好きなことで稼ぐという道をさぐります。一朝一夕にはうまくいきませんが、ケンさんの助けもあって、小学生とは思えないたくましさで踏ん張るレイ。
この物語を読んだ大人の中には、子どもにこんなことができるのか…などという人もいるかもしれませんが、後ろがけっぷちの子どもがどれほどたくましいかは、貧しい国の子どもたちを見ればよくわかります。
一見、豊かに見える日本にだって、こういう子はいるのです。むしろ、その方が現実的なのが、今の日本です。
若い魂の夢を見る力、生き抜く力を感じさせてくれる物語です。
大人の目で見れば、しがない流しのギター弾きのケンさんが魅力的です。
勝気な歌姫のリンがいることで、レイが一人ぼっちに陥らないで良かったなあと思いました。
物語のラストも温かく、そして、夢はまだ続くのです。レイの夢のむこうは、今や世界の人気者になった沖仁やMIYABIのような世界を目指して輝くのかな…なんて思いながら、本を閉じました。