『電気ちゃん』著/楠 章子

電気ちゃん

電気ちゃん

超ダメ男「電気ちゃん」に拾われた16歳の家出少女・鳥子(とりこ)。 乳がんの宣告をされた26歳OLの寿寿(じゅじゅ)。 凄腕の料理で男を次々と部屋に誘う38歳バツイチのきみ夜。 男性より女性を愛する超美人ホステス、紫(むらさき)。 「電気ちゃん」という奇妙な縁に引きよせられたのは、生きることがあまり上手ではない女たち。ひとりぼっちの魂をそっと包み込む五つの物語。 気鋭のスト―リーテラーによる鮮烈な渾身作!
「魂が電気に触れたようだった。ぴりぴりと痺れる。痺れたその後、じんわりと温かく、豊かになっていく。そして、哀しくなっていく。鳥子、寿々、紫、きみ夜、電気ちゃん。一人一人の物語は孤独で異質で透明だ。この哀しさ、この澄んだ哀しさは、いったいなんだろう。そして、この強さは、なんだろう。 一人一人の孤独が絡み合い、もつれ合い強く鮮やかな色彩を放つ。幼い鳥子がパレットの上に残した紫の色のようだ。 人のもつ、物語のもつ、哀しみと強さがここにある。」 ――あさのあつこ
(内容紹介より)

あさのあつこさんに推薦文を読むと、もう書くことがないように思います。
ピリピリと背中が冷たくなるような切なさと孤独を、読後、感じます。
かといって、冷たい孤独だけではないのです。人の心から生み出される優しさと諦観……その作用によって、ほんのりと温かく、救いがあるように感じます。
人にとって、優しい諦観とは、生きる力でもあるのだと感じさせられました。
寂しい人が読んだら、もっと寂しくなる物語ではなく、寂しさに隠された人と人の触れ合い、優しさが、この世にはある事に気付きます。人間を、正邪、善悪に真っ二つに分けてしまわない繊細な作者の息遣いをぜひ感じて下さい。