『レントゲン』著/風野潮(講談社)

レントゲン (YA! ENTERTAINMENT)

レントゲン (YA! ENTERTAINMENT)

「僕は、兄が苦手だ。イヤな奴だからとか、いじめられてるからってわけじゃない。迷惑かけられてるわけでもないし、一緒にいて恥ずかしいような容姿でもない。むしろ、その逆。兄の廉太郎はイイ奴だし、クラスの女子に写真見せたら一二〇パーセント「紹介してっ!」って頼まれるレベルの美形。おまけに背も高い。性格は、のんびりしててやさしくて、たぶん僕が頼めば、自殺する以外のことならなんでもやってくれるんじゃないかと思うくらいの弟思い。いや、もしかしたら「死んで」って言っても「別にええよ」って言いそうで怖いくらいで。だから、冗談でも「死ね」とか言えないんだよな。ああ、そっか。たぶん、そういうところがイヤでイヤでたまらないんだと思う。」──本文より。
橘廉太郎と弦次郎は年子で同じ学年の高校一年。もともと仲が良い兄弟だったはずの二人だが、子どもの頃に二人で一緒に習っていたバイオリンのせいで、少し仲がぎくしゃくしてしまっていた。バイオリンとクラシック音楽を心から愛する弟の弦次郎よりも何でも軽くこなせてしまう兄の廉太郎のほうがコンクールの成績が良かったからだ。 弦次郎の気持ちを感じで早々にバイオリンをやめた廉太郎は、その後も特に何にも熱くなれるものがなく、モデルのバイトをしてみたり、祖父の経営する病院をつぐために医者になるべく淡々とした学校生活を送っていた。そんな廉太郎はある日、スパニッシュギターに出会い、初めて心を動かされる自分に気がつく。兄はギター、弟はバイオリン。『ビートキッズ』の風野潮氏による、少年たちの音楽青春エンターテイメント小説。
(BOOK紹介より)
amazonに紹介された長文の内容紹介を読むと、この本の担当編集さんの愛が伝わってきそうです。
文武両道、長身イケメンモデル体型の兄レンと、小柄で優等生の弟のゲンは、同学年の兄弟。
この二人をめぐる家族と高校の友人たちの関係に、ドキドキする女の子も多いかもしれません。
レンとゲンの兄弟だけでも目移りするのに、オーケストラ部、柔道部、ギター部などの個性あふれる少年たちが登場…だけでなく、フィギュアスケートの美しき少年たちまで登場して、もう、これは、誰を好きになればいいのか、目移りしっ放しです。
でも、軽めのエンタメ?って思うのはちょっと違うかも。盛りだくさんの楽しさは間違いないのですが、物語には、「心的外傷後ストレス障害PTSD)」という胸が苦しくなるようなテーマも隠されていて……
そう、一言で語れるような単純な物語ではないのです。
それでも、読後感は爽やかで明るくて、読んで良かったなあと思えました。
それにしても、潮さんって、めっさ、美少年好き? いや、私も人のことはいえませんが……
でも、大切なことは、作家が大好きなものを書くということ。物語というのは、まず、第一に作家の愛がなければ、真実の意味で、読者がドキドキ楽しめる物語にならないということです。
書くなら、惚れた人物を描こう〜ってこと!