『江戸猫ばなし』著/赤川次郎/稲葉稔/小松エメル/西條奈加/佐々木裕一/高橋由太/中島要(七作家のアンソロジー)(光文社)

ご縁があって、白泉社の『てのひら猫語り』を書かせて頂いたので、猫つながりで読みたくなりました。大好きな小松エメルさんが書かれているというのも理由の一つですが、赤川次郎さんはじめ、錚々たる七作家さんがどんな猫ばなしを書いておられるかも楽しみでした。

江戸猫ばなし (光文社時代小説文庫)

江戸猫ばなし (光文社時代小説文庫)

町人の市助は、ひょんなきっかけで“猫寺”での肝試しに挑む羽目になった。ところがそこには世にも怖ろしい秘密があって―(赤川次郎「主」)。江戸を舞台に、愛らしい猫たちと、人々の粋が織りなす数々の物語。ほろりと泣ける人情話や、あっと驚く奇譚など、七人の名手が思う存分に江戸の猫を活写!全編新作書下ろしで贈るとっておきの豪華時代小説アンソロジー!(BOOKデータより)
小松エメルさんの「与一と望月」、読み始めでは「なるほど、猫絵ときたか!」と手を打ちました。
街道筋で、妖しげな猫の絵を売る(いや、貸し出す)男、与一と、猫絵から抜け出す妖しの猫の望月の物語ですが、中盤過ぎれば、この与一と化け猫の情の深さにほろりとして愛しくなり、知らずしらずに物語に取り込まれておりました。エメルさんといえば、読みかけると夢中になるファンが多いのも頷けました。読めば、登場する化物だって愛しくなるんですから〜いやいや、面白かったです。赤川次郎さんの「主」は、大名家のお家騒動の顛末に猫がかかわってきます。公儀隠密までも登場する本格時代小説調に始まりますが、ここに登場する猫が切なくて……。佐々木裕一さんの「ほおずき」は、ふっと、山本周五郎さんの「泥棒と若殿」を思い出す一作でした。いえ、若殿も泥棒も登場しませんが、生きているのか死んでいるのかわからないような生き方をしている若者(周五郎さんのお話なら、若殿)が、猫(周五郎さんのお話なら泥棒)を通じて幸せに出会うのではないか…という余韻がのこる温かいお話でした。
ここに全部はご紹介できませんが、楽しさが一杯つまった一冊だったことをご報告しておきます〜
ことのついでに、あさのあつこさんや私を含む五作家が執筆した猫本もご紹介しておきます〜『てのひら猫語り』の感想はこちら→http://d.hatena.ne.jp/rieko-k/20141031/P1