『空へ』著/いとうみく(小峰書店)

空へ (Sunnyside Books)

空へ (Sunnyside Books)

父親の突然の死により、かあちゃん、妹の陽菜、そしてオレ、ちいさなアパートでの三人暮らしがはじまった。働きに出るかあちゃんにかわって、妹の面倒はみるって言ったものの、オレにできることはあまりに少ないーー。おかゆの作り方をおしえてくれた隣のお姉さん。二階に越してきた同い年のシュウ。万引きをくり返すクラスメートの女の子……。いろんな人との関わりが、かたくなだった心のありようを少しずつ変えていく。そして、祭り好きだったとうちゃんにかわって、神輿をかつぐ決心をする。もちろん、父ちゃんみたいにうまくは担げないけど、それでも、いまの自分のもてる力をふりしぼって、神輿を空へ、空へと高くつきあげる……(BOOKデータより)
デビュー作『糸子の体重計』で児童文学者協会新人賞を受賞された、季節風同人でもある、いとうみくさんの新刊です。
この作品は児童文学ですが、お父さんを亡くした少年の一人称で描く青春小説といってもいいのではないかと思いました。
母と妹を守ろうとする少年の気負いや失望、友情などを丁寧に描いた作品です。主人公だけでなく、魅力的な少年少女たちが登場します。中でも、私は「水きり」のシュウが好きでした。
読み終えても、あのシュウはどうしてるのかなと思わずにはいられないほどの存在感でした。いつか、外伝として、シュウの話も読みたいと思いました。