『若冲 ぞうと出会った少年』著/黒田志保子

若冲―ぞうと出会った少年

若冲―ぞうと出会った少年

京都の青物問屋「枡屋」の長男として生まれた若冲が「奇想の画家」として世に出るまでを描く。(BOOKデータより)
かの天才絵師、若冲の少年時代を彷彿としました。
時代を細やかに描いているにかかわらず、時代小説という距離を感じることなく、今の物語としても読める少年少女むき時代小説です。
作者の黒田さんは、時代物語を書くと思っていなかったとおっしゃっていますが、いやいや、まさに書くべき人が書いたと感じました。
絵を描くことに憑りつかれた少年、若冲の思いや焦り、そして、家族への愛のため、迷い苦しみながら、それを乗り越えて、絵師として生きる決意をする……これは、現代を生きる少年少女にとっても、とても力になる物語ではないのかと思いました。
そしてまた、この時代の自然災害や火事なども描かれ、私達の暮らす日本という土地は、常にそういう試練に遭って生き延びてきたのだということを、少年少女たちが知っておくことは、とても大切だとも思いました。
命の限り、ひたむきに生きる若冲の生きとし生ける者への愛の深さは、そういう国に生まれ死んでいく民族ならではなのかもしれません。
私が作家デビューした頃から親しかった黒田志保子さんですが、心から、いい作品を書いたね♡と、伝えたい一冊でした。