『リジェクション 心臓と死体と時速200km』著/佐藤まどか

リジェクション 心臓と死体と時速200km

リジェクション 心臓と死体と時速200km

16歳のイタリア人の女の子、アシュレイは事故で死にかけて心臓移植してから、急に人生が愛おしくなった。「ほんもの」に出会う旅へ出かけたら、ナゾの殺人事件に遭遇!犯人はだれ? アシュレイは、一人死んでいった男との出会いで、「ほんとうに生きる」って、どういうことなのか自分を見つめなおすようになる。(BOOKデータより)
最初に出たのは「なんて、かっこいい物語だろう〜!」って言葉だった。ただし、軽い意味のかっこいいではない。哲学的なまでに深く人間に切り込んでいくのに、主人公が、登場人物がかっこいいのだ。
タイトルでいうなら、リジェクション(拒絶反応)の恐怖を抱いたまま生きる少女アシュレイも、アシュレイが出会った、古臭い話し方をする青年、ルカも、そのおばあちゃんも、いってしまえば、事件の発端になる死体までかっこいい。
「死体までかっこいいってどういうこと?」って思う人、ぜひ読んで下さい。人間を描くのには、その人が喋ろうが喋るまいが、息をしているか、してないかさえ、関係ないんだと気付かされる物語です。
人間の生を、心を、愛をもって見つめること、ただそれだけなのだと。
その視点、視線が、物語世界のすべてに行き渡っていて感動した。
冷たく凍えてしまったようなアシュレイと母親との関係もまた、その例外ではない。
人間の内面にあるクール、ニヒル……そういったものを否定はしないが、酔わない。酔ったまま終わらず、温かさが溢れ出すこの物語が、私はすごく好きだ。