『ゆず先生は忘れない』著/白矢三恵 絵/山本久美子

ゆず先生は忘れない

ゆず先生は忘れない

いつもは明るいゆず先生が、地震防災訓練でふざけた教え子に話しはじめたのは、二十年前にこの町で発生した大地震の体験談だった。大地震の数日後、ゆずるが被災地で学んだ大切なこと。そして二十年後、ゆず先生が教え子に語る大切なこと…(BOOKデータより)
読み始めて、あの時、阪神大震災地震が蘇りました。
あの日、京都も揺れて、私の住んでいた団地では、ドーンと突き上げられ、刹那、ドンッと落ちたような縦揺れでした。
この物語の中でも、テレビが落ちた話がありましたが、私の家でも、昔の重いテレビが、ドンと落ちました。寝ている足の上でなくて良かったけれど、もし足の上なら骨が折れていたかもしれません。
棚から色んな物が落ちたけれど、団地の建物はヒビが入ったぐらいで無事でした。
でも、翌朝、テレビを見てびっくりしました。
大阪や神戸がとんでもないことになっていたからです。
あの日の恐ろしさが蘇って、ゆず先生の気持ちがよくわかりました。数日後、震災後の大阪へも入って、被害の凄まじさを目にした時のあの気持ち……あれは、大人であっても子どもであっても呆然とするしかなかった。
あの日、あの時、私達に何ができたのか……被災した街に何が起こっていたのか、今でも私は、きちんと整理して考える事ができません。ずっと、うろたえ続けていたのだと思います。
今また、あの地震が繰り返されたら、やっぱりうろたえるだけなのかもしれない……と思う私のような人間に、この物語は、心を静かにして何を見つめるべきかを教えてくれたような気がしました。
そうなんですね。大変な混乱の時だからこそ、何が一番大切なのかを見失わないこと、それこそが、どんなに悲惨な場所へも、愛と希望を運んできてくれるのだと感じた一冊でした。