『ハリネズミ乙女、はじめての恋』

令丈ヒロ子ねえさんの一般書の新刊です。

ハリネズミ乙女、はじめての恋

ハリネズミ乙女、はじめての恋

運命の相方、ハリネズミのハリ君には、隠された秘密があった――。嶋本好花(シマモトコノカ)19才。コノカが大阪にうまく適応できなかった原因は、おばあちゃんの代から続く芸人一家だということ。関西中の人に、嶋本一家は知られており、そのため「なんかおもろいこと、やってみてや」攻撃にあうことしょっちゅう。その上5つ上のお兄ちゃんが人気漫才師になったことでさらに面倒に。すっかり誰も寄せ付けない精神的引きこもり高校生になったコノカの夢は、東京に出て、だれも自分と自分の家族のことを知らない中での生活……「匿名生活」をおくることだった。ドジでお世間知らずのコノカは、居酒屋のバイトもクビ。生活に困っているというのに、ふわふわと夢見ている乙女気質は直らない。そんな中、通りかかったペットショップで1匹の白いハリネズミに心惹かれる。なぜか、そのハリネズミ……ハリくんの言葉がわかる! しかも大阪弁! 優しくてピュアなハリくんとは、親友になった。そのペットショップで働き、毎日ハリくんとおしゃべりできる、不思議に充実したハッピーライフだったが……。ハリくんとの会話を客に目撃され、ツイッターに動画をあげられ、「ハリ乙女」というあだ名が付き、一躍、時の人に。勢いでハリくんと腹話術師としてデビューすることに……。(BOOKデータより)
孤独な現代乙女とペットとの「ほのぼの物語」だと思っていましたけど、さすが動物好きのヒロ子ねえさんが描く物語です。主人公のコノカ同様、ハリネズミの白ハリ君の可愛さに、いつの間にか虜になってしまいました。そして、気付かぬうちに、可愛いだけでなく、白ハリ君なしでは生きられないような気持ちにまで同化してしまっていました。そして、結末を迎えた時、二度聞こえる白ハリ君の声、「ねえさん、さよなら」に、号泣……なんと、二度も! いえ、でもこの物語は、悲しい物語ではありません。乙女心をすくい取ってくれる愛の物語なのです。孤独な乙女に、孤独な乙女だった人に、心からお薦めです。