新選組づくしの三日間 其の三

6月16日午後
調布に到着。そこからタクシーで龍源寺へ。タクシーの運転手さんは若くて親切な方で「新聞の取材ですか」と聞かれるので、「本を書いている」と答えると、『月下花伝』をきっと読むといってくださいました。この時だけでなく、今回の旅はことごとく親切な見知らぬ方のおかげで、つつがなく運んだのです。ホテルの方、運転手さん、通りがかりの若い女性、ガードマンの男性などなど、ほんとに皆さん、神さまのようにご親切でした。そのことも、とても不思議でした。
到着した龍源寺はひっそりしたお寺でした。境内にはどなたもいらっしゃいません。手桶があったのでそれに水をくんで、本道奥の近藤さんのお墓へむかいました。本堂横に、親族のお名前が入った手桶があり、そこに「宮川」と入った桶もありました。昨日、日野をご案内して頂いた宮川さんのお顔が浮かんで、なんだか嬉しくなりました。
近藤さんのお墓では、おじいさんがお一人、お墓の写真を撮っていらっしゃいましたが、お会いしたのはその方おひとりでした。お寺は人見街道に面しているのですが、境内はとても静かです。お墓に向かって、「あ」と思いました。お供えのお花がどれも枯れているのです。お花を持ってくれば良かったと思いました。京都で山南さんや松原さんたちのお墓に参る時にはいつもお花とお線香をお供えしています。でも、こちらの新選組のお墓はファンが多くて、お花はかえって迷惑になるとお聞きしていたので、持っていかなかったのです。実際、土方さんのお墓も井上さんのお墓も供花は生き生きしていました。(後にお参りする沖田さんのお墓などは供花供物は一切禁止です)ですから、近藤さんのお墓も同じだろうと思っていたのです。だから、ハッとしました。土方さんや井上さんのお墓は新選組の観光客が沢山おいでになる日野にあります。でも、近藤さんのお墓は調布ですからぽつんと離れているのです。そのせいで、ご親族の月参りの他はそれほどにぎわうわけでないのかもしれません。でも、近藤さんが寂しがっていらっしゃるような気がして、胸が痛みました。これから、ご本を書かせて頂くお願いとお心に添うような作品にできるよう頑張りますと誓って、ご親族のお墓へも「どうぞよろしく」とお水をそそぎました。
お参りを済ませて、まずさがしたのはお花屋さんです。ずいぶん歩きましたが、お花屋さんはありませんでした。「またもう一度、本が出来てから来よう。その時はきっとお花を持って」と心に誓って、今回はお花を供えるのはあきらめました。その後、近藤さんの生家跡へ寄って、帰路につきました。この日、私の心に強く残ったのは、近藤さんのことです。これまでの土方人気、沖田人気の創作物のせいで、近藤さんはずっと脇役でした。でも、真実は近藤さんが新選組を引っ張っていったのです。近藤さんなしには、鬼の副長土方歳三も、副長助勤沖田総司もなかったのです。近藤さんはそれだけの人品を備えた人だったにちがいありません。私なりの近藤さんを、きっと書こうと思いました。
さて、残るは翌日の沖田さんのお墓参りです。これについては、また明日。